十数億円のシステムが「無用の長物」に
原因は、システムそのものの不備ではなく、現場で働く人たちが新しいシステムを使おうとしていないことにありました。
「社員のなかに、コンピュータ・アレルギーをもった人が多く、事務方はともかく、営業や幹部が新システムに慣れようとしない。社員がきちんと説明できず、使おうとしないから、現場で作業をする人も使わない。昔のままのやり方でしか業務が回らない状態でした。その悪循環で、高価なシステムが無用の長物となっていたのです」
この様子を見学したことで、Aさんの会社では
「一気ハイスペックなシステムを導入するのではなく、無駄を省くための必要不可欠な部分から段階的に導入していく」
「社員はもちろん、パートやアルバイトへの教育期間を十分にとる」
ということが再確認されました。
Aさんの会社では、「まだ大手のようなものではぜんぜんない」と言いながらも計画は段階を踏んで進んでおり、それなりの省力化、コストカット効果が出ているそうです。
「見学させてもらった同業他社のほうは、研修、教育を通じた周知と徹底が図られているようですね。その費用がさらにかかってしまったわけですが、十数億円もの投資を遊ばせておく余裕はないでしょうから、背に腹は代えられないのでしょう」
急いてはことを為損じる。わかっているようで忘れがちな経営の要諦の一つです。
井上トシユキ