社歌とは、文字通り「会社の歌」だ。1950年代~70年代の高度経済成長期には、多くの職場で希望に燃えた若者たちに歌われていたと聞くが、その後、だんだん下火になっていった。しかしいま、社歌に再び注目が集まっているのだそうだ。
豪華コンビが新社歌を作成したパナソニック
2008年10月1日に松下グループから名称変更したパナソニックグループは、新しくグループソング「この夢が未来」を作成した。作曲が久石譲、作詞が森雪之丞という豪華コンビの手によるものだ。
これは社員でなくても聞いてみたいもの。しかしホームページ等で公開される予定は「今のところありません」とのこと。各職場の朝会で歌われているようだが、従業員以外が耳にすることは難しそうだ。
社歌を公開している会社もある。有名どころでは総合解体工事の日本ブレイク工業。2003年にネット上で爆発的に話題を呼び、CDやDVDが発売された。もともとは、現場事務所向けの単価表などを収めたCD-Rの「空き容量を埋めよう」と考えたのが社歌作成のきっかけだったが、アニメソング風の曲が人気を呼び、一気にメジャーになった。
CDやDVDの販売によって、「解体業のイメージをよくしたい」「工事内容をアピールしたい」「親の仕事に良い印象を持たせたい」という狙いは十分に達成できたようである。
感動のコメントが寄せられたJR九州の「浪漫鉄道」
JR九州の社歌「浪漫鉄道」が聴きたい!
インターネットの動画共有サービスYouTubeには、大手企業の社歌が非公式にアップロードされている。中でも人気が高いのが、JR九州の社歌「浪漫鉄道」だ。"走りだせ 人よ 時間よ・・"の歌い出しで始まる壮大なメロディは、一般的な社歌のイメージを超えている。コメント欄には、
「九州人でよかった」
「聴くたびに胸が震え涙が溢れます」
「JR九州、最高!!」
という熱い思いが寄せられていた。ただし、このコメントが寄せられた動画は、残念ながら2008年10月上旬までに削除されている。
<YouTube>JR九州「浪漫鉄道」(2009年02月20日再アップ)
JR九州広報室によると、本社社屋では昼休みの放送で「浪漫鉄道」のメロディが流れているという。また、入社式には新入社員全員が合唱するなど、節目の社内行事で歌われているそうだ。ホームページ等での公開予定は今のところないというが、この歌が会社のイメージを大きく高めていることは間違いない。一ファンとして公開を期待したい。
社歌の新しいトレンドは「J-POP風」「社員が作詞」
「社歌制作ドットコム」を運営するアイデアガレージの西尾竜一社長によれば、一時は廃れたかに見えた社歌が、いま再び注目されているという。しかし、いまどきの社歌は高度成長期とはちょっと違う。
社員全員が直立不動で声を揃えて歌うものではなく、iPodなどのメディアプレイヤーに入れて、ひとりでも気軽に口ずさんだり聴いたりできる親しみやすい歌が人気だ。同サイトで公開されているサンプル版の歌も、まるでJ-POPの曲かと思うほど。
さらに最近は、「社歌」だけでなく「法人営業部の歌」や飲食店の「開店前の歌」などのニッチな依頼もあり、作詞・作曲を社員自身が手がけるケースも増えているそうだ。
「作詞に従業員たちが参加できれば"自分たちの歌"という意識も高まる。いつでも聴き返して"自分は何のためにここで働いているのか"振り返るきっかけになるでしょう」
仕事がタコツボ化し、職場のコミュニケーションが悪くなると、ちょっとした行き違いが大きなトラブルになってしまうこともある。パソコンを使う仕事場では、ほとんど会話を交わさない日もあったりする。そんな職場の「コミュニケーション不全」に悩んでいる会社は、従業員たちが歌いたくなる歌を作って、声を合わせて歌ってみれば、職場の一体感が高まるかもしれない。