「もし運命の人だったら、またきっと縁がある」
「子供でもいれば違ったんでしょうけど、まだ26だから、子供がどうとか考える年でもなかったんですよね」
絵美さんの消極的な態度をみて、健一さんも一度は転勤を断ろうとしたという。すると、二人の共通の上司だった部長から電話がかかってきて、怒られた。
「お前が反対してんのか! お前が一緒に行かないからあいつが行かないんだ。お前も一緒に行け! 手当てがたくさん出るようにしてやるから」
パートナーに加え、上司からも説得されたが、それでも、やっぱりアメリカに行く気にはなれなかった。一緒に行くか行かないか。さんざんモメにモメて、健一さんが渡米するころ、二人の関係はグチャグチャ。相手のことが好きなのか嫌いのか。それすらもよく分からなくなってしまった。そして、絵美さんは彼に告げたのだ。
「別れよっ。一回別れて、その間にそれぞれ好きなことをしよう。もしお互いに運命の人だったら、またきっと縁があるよ」