性急な「IT化」のおかげで、かえって残業が増えた
さらに困ったことに、上司はプリントアウトした紙に指示や返事を書いてしまうので、事務の担当者がスケジュールソフトの画面上に打ち込み直すか、各営業担当がスケジュールソフトに打ち込んだ自分のリクエストの確認のためだけに帰社するか、電話で連絡しなければならないのだとか。
「いちいちプリントアウトしたり、打ち直したりするのは私たち。不景気とスケジュールソフトの導入で採用も控えていたから、以前よりも忙しくなちゃって残業は増えるし、ストレスがたまる一方よ!」
事情を知った若手営業マンからは、「いっそのこと、前と同じように印刷したスケジュール表とホワイトボードに、直接書き込むやり方に戻した方が良いのではないか」との声が出る始末。
ITやデジタルに人を合わせるのではなく、人を中心にITやデジタルの配置、導入を計画する。もはや、言われ尽くされたことではあります。
ITがこれからの産業の柱になるのはわかっています。しかし、あまりに性急に事を進めてしまうと、かえって生産性が落ちる危険があるという教訓でしょう。
井上トシユキ