最初は大嫌いな男だったのに(上)

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   出会った瞬間にビビっときた!――芸能人の結婚会見でときどき耳にする「運命的な出会い」。しかし、結婚したカップルに話を聞くと「最初はなんとも思っていなかった」という声も多い。特に、同僚同士という関係から徐々に接近してゴールに至る「社内結婚」の場合は……。なかには「初めは相手のことが大嫌いだった」という女性だっているのだ。

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「同期のなかで一番嫌いなタイプだった」

「私が大嫌いなタイプ。仲の良かった同期20人くらいの中でもっとも嫌いなタイプでしたね」

   園田絵美さんは、坂本健一さんと知り合った入社1年目のときを振り返る。

   ルックスが気に入らなかった、というわけではない。「キアヌ・リーブスに似てるよね」と友人に言われたこともある。たぶん、イケメンといっていい部類だろう。でも好きになれなかった。

「なんか、話がかみ合わないんですよね。波長が合わないというか……。会話をしていても、自分の求める答えが返ってこない感じ。周りに気が合う同期の男の子や女の子がいっぱいいたので、この人は合わないな、という気持ちが強かった」

   絵美さんは文系だけど、健一さんは理系。ゴーイングマイウェイという感じで、あまり周囲を気にする雰囲気ではなかったのも、マイナスポイントだったのかもしれない。

   二人は、東京に本社がある機械メーカーに同じ年に入社した。健一さんが一つ年上。同期の飲み会や会社の研修会で顔を合わせることが多かった。だが、親しく話すことはなかった。

「一緒にご飯を食べにいこうってよく誘われましたけど、いつも断ってましたね。でも何回も誘われるうちに同期の女の子に『行ってあげなよ!』と言われて、仕方なくその子も入れて3人で飲みに行ったことがあるくらいでした」

心を動かした「海外からの手紙」

   しかし、転機が訪れる。健一さんがヨーロッパに3か月間の長期出張に出かけることになり、会社で壮行会が開かれた。絵美さんは上司から5000円を渡され、「餞別を買ってあげて」と指示される。彼女がプレゼントとして選んだのは、歯ブラシだった。

「形に残るものはイヤだったので、消耗品にしようと思ったんですよ(笑)。トラベルグッズを売っている店に行って、歯ブラシとかの生活必需品ばかり選んで渡しました。渡すときには、上司からお金をもらって買ったこともハッキリ伝えました」

   だが、健一さんは絵美さんが選んだ歯ブラシをいたく気に入った。「ヘンなセンスが面白かったみたい」。しばらくして、海外からお礼の手紙が届いた。その字を見て、絵美さんはびっくりした。

「初めて手書きの字を見たんですが、その字がすごくきれいだったんですよ!」

   意外な字の美しさにちょっと感心した。へえ、こんなきれいな字を書ける人なんだ。文章がしっかりしているのも好印象だった。

   帰国したときにはお土産をもらった。当たり前といえば当たり前のことだが、着実に健一さんのポイントはアップした。

「考え方が逆だから合わないと思っていたけれど……」

「僕とつきあってほしい」

   帰国からしばらくして、健一さんから告白された。だが即座に断った。そのとき、絵美さんには交際中の彼氏がいたからだ。

   でも、あきらめなければ……最後に愛は勝つ!(こともある)。

   最初の告白から1年後。健一さんが再び交際を申し込むと、今度はOKの返事が返ってきた。

「知り合ったころの印象とは全然違っていて、そのときはだいぶ仲良くなっていました。あいかわらずまったく正反対の考え方だったけど、自分も社会人になって何歳か年をとって、いろんな見方をしなくちゃいけないと気付いたんですよね」

   自分が興味のないことに興味があったり、自分が知らないことを知っていたり。健一さんのそういうところが面白いと思えるようになっていた。

「考え方が逆だから合わないと思っていたけれど、違っているからいいと考えられるようになっていました」

   同じことが見方を変えれば、まったく別の意味をもってくる。解釈の仕方しだいで、プラスにもなればマイナスにもなる。仕事でも恋愛でもそれは同じだ。むしろ二人の場合、最初マイナスからスタートした分、かえって良かったのかもしれない。

   こうして絵美さんと健一さんの「社内恋愛」が始まった。ところが、健一さんに海外駐在の話が持ち上がったとき、にわかに暗雲が立ち込めることになる。

社内結婚必勝法 其の1

    字のウマさで恋の勝敗が決まることもある。字がヘタな男女は書道教室に通うべし。

(つづく)
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   ※記事中の人物名は仮名です。「最初は大嫌いな男だったのに(下)」もご覧ください。



社内結婚必勝法

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