「考え方が逆だから合わないと思っていたけれど……」
「僕とつきあってほしい」
帰国からしばらくして、健一さんから告白された。だが即座に断った。そのとき、絵美さんには交際中の彼氏がいたからだ。
でも、あきらめなければ……最後に愛は勝つ!(こともある)。
最初の告白から1年後。健一さんが再び交際を申し込むと、今度はOKの返事が返ってきた。
「知り合ったころの印象とは全然違っていて、そのときはだいぶ仲良くなっていました。あいかわらずまったく正反対の考え方だったけど、自分も社会人になって何歳か年をとって、いろんな見方をしなくちゃいけないと気付いたんですよね」
自分が興味のないことに興味があったり、自分が知らないことを知っていたり。健一さんのそういうところが面白いと思えるようになっていた。
「考え方が逆だから合わないと思っていたけれど、違っているからいいと考えられるようになっていました」
同じことが見方を変えれば、まったく別の意味をもってくる。解釈の仕方しだいで、プラスにもなればマイナスにもなる。仕事でも恋愛でもそれは同じだ。むしろ二人の場合、最初マイナスからスタートした分、かえって良かったのかもしれない。
こうして絵美さんと健一さんの「社内恋愛」が始まった。ところが、健一さんに海外駐在の話が持ち上がったとき、にわかに暗雲が立ち込めることになる。