心を動かした「海外からの手紙」
しかし、転機が訪れる。健一さんがヨーロッパに3か月間の長期出張に出かけることになり、会社で壮行会が開かれた。絵美さんは上司から5000円を渡され、「餞別を買ってあげて」と指示される。彼女がプレゼントとして選んだのは、歯ブラシだった。
「形に残るものはイヤだったので、消耗品にしようと思ったんですよ(笑)。トラベルグッズを売っている店に行って、歯ブラシとかの生活必需品ばかり選んで渡しました。渡すときには、上司からお金をもらって買ったこともハッキリ伝えました」
だが、健一さんは絵美さんが選んだ歯ブラシをいたく気に入った。「ヘンなセンスが面白かったみたい」。しばらくして、海外からお礼の手紙が届いた。その字を見て、絵美さんはびっくりした。
「初めて手書きの字を見たんですが、その字がすごくきれいだったんですよ!」
意外な字の美しさにちょっと感心した。へえ、こんなきれいな字を書ける人なんだ。文章がしっかりしているのも好印象だった。
帰国したときにはお土産をもらった。当たり前といえば当たり前のことだが、着実に健一さんのポイントはアップした。