鎌倉に「面白法人」を名乗る会社がある。正式名称は株式会社カヤック。インターネットを使った自社サービスの企画・運営と、ウェブの受託制作を行っている。
80人の全社員紹介で、個性的な人材をウリにする
自社のウェブサイトには、全社員を顔社員付きで紹介する「メンバー紹介」のコーナーがある。業務内容だけでなく、あだ名やスナップ写真、おすすめ本などもあり、社員ひとりひとりの個性がよくわかる。担当するプロジェクトへのリンクもある。
2009年度の新卒採用企画「ニセモノ社員を探せ!」(中央が柳澤氏)
代表取締役の柳澤大輔氏によれば「わが社のウリは、社員が本当にいいヤツばかりであること。ならば80人全員をホームページに載せてしまおうと思いました」とのこと。何をするかより「誰とするか」を重視する会社の姿勢がよく表れている。顔写真の掲載について、社員には抵抗感はないという。「採用時には多くの社員と面談してもらっていますし、入社の時点でカヤックの文化を理解してもらっていると思います」(渡邉万里子さん)。
このほかにも、給与の一部がサイコロで決まる「サイコロ給」や、鎌倉駅から徒歩5分の特徴あるオフィス(2008年度グッドデザイン賞受賞)などが紹介されており、サイト全体から「働く社員が面白く働ける環境づくり」に熱心な会社ということが伝わってくる。
他社サイトを徹底調査し、コンセプトを決定
カヤックが会社サイトをリニューアルしたのは、2007年7月7日。1500以上の他社サイトを研究し、自社サイトのコンセプトを検討した。受注制作事業のページでは、ウェブ制作のポリシーや得意分野、最新実績や担当者、受賞歴などが分かる。
オリジナル&提携Webサービス事業のページは、各サービスの入り口として位置づけている。音声を投稿できるコミュニティ「こえ部」や、絵画を測り売りする「ART-Meter」、1アイデアを100円から販売する「元気玉」など、独特なものばかりだ。
また、会社サイトにあわせて、経営理念を「つくる人を増やす。」へと見直した。「経営理念は法人の存在理由。カヤックの生きる目的であり、社会貢献の手段を示す言葉にしたかった」(柳澤氏)。この変更に当たっても、東証1部上場企業183社の事例を分析したという。遊び心はあるが、やることが徹底しているのがこの会社らしい。
広報・PR媒体として会社サイトが再び注目されている。カヤックのサイトは、顧客や取引先、従業員に対して明確で筋の通ったメッセージを伝えるには、確固とした会社のスタンスがあることが大切という良い例だろう。
面白法人カヤック
大学時代の友人3人が資本金3万円を出し合い、1998年に合資会社を設立。創業時より「面白法人」を名乗り、2005年に株式会社化。創業以来200以上のウェブサービスを生み出すアイデア集団。現在“キもい”(気持ち悪い)を切り口にした携帯サイト「キもゲーTown」で、グランプリ賞金30万円の「キもゲーFlashコンテスト」を開催中(2008年11月8日まで)。
■ウェブサイト拝見
企業がウェブサイトで自社の製品やサービスをPRするのが当たり前の時代。サイトの良し悪しが広報戦略の成否を決める。ほかとは一味違う魅力的なサイトはどんな観点で作られているのか。そのポイントを探る。