最先端技術を取り入れ、日本のアニソン・J-POP界をけん引する 音楽プロデューサー 佐藤純之介

Just earの音は数値的な正しさと個人的な正しさの中間点

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   ――そしてそれら音源制作の際のリファレンス用にJust earイヤホンをカスタムしたとのことですが......。

   これまでもいろいろなヘッドホンやイヤホンをリファレンス用に使っていたんですけど、たくさん聴いているうちに自分がリファレンスするべき音というものがわからなくなっちゃって(笑)。

   ――いくらリファレンスモニターは音質がフラットだとはいえ、メーカーごと、モデルごとに音のキャラクターが違うから。

    体調や気分によっても左右されますし。調子が悪くなると低音がキツくなって高音が抜けやすくなるし、酔っても音の聞こえ方は変わります。それに身体のバランスによっても違う。過去に奥歯4本と前歯4本を抜いてワイヤーで引っ張る歯列矯正をしたら音の定位が変わりましたから。それまでセンターの音が若干右寄りの位置で聞こえていたのに、ちゃんと真ん中に来るようになったし、耳の解像度も明らかに上がりました。

   ――Just earには実際どんなリクエストを?

   どの帯域もフラットに鳴って、しかも帯域ごとに解像度が変わらないように、と。別メーカーのイヤホンの中にはえげつないくらい解像度は高いんだけど、ある帯域と隣の帯域がクロスオーバーするポイントの音がどうしても濁ってしまうものもあるので。好みの音だからプライベートでは愛用していますが、仕事用としてはカメラでいう被写界深度をさらに上げたかった。

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   ――どんな帯域にもジャストでピントが合う音像を目指した、と。

   ただ、音質コンサルタントとの音質調整を続けているうちに、ぼくは数値的にフラットな音をフラットだと感じてないことが発覚し......(笑)。

   ――音の聞こえ方はコンディションや体格に左右されるものである以上、数値的な正しさ=個人的な正しさとはならない。

   なので、ぼくにとってズレている音を聴き続けるのはイヤだけど、でも数値的に正しい音も把握したいということで、両者の中間を落としどころにしてみました。で、2021年の12月末に完成したんですけど、ちょうどその頃、ある声優ユニットのライブのディレクションを任されていて。1月いっぱいまで毎日リハーサルみたいなスケジュールだったので、さっそく使ってみたら、今度はJust earの音質がよすぎるばかりに接続したワイヤレスレシーバーのS/N比の悪さにケチを付け始めるという(笑)。でもレシーバー側の音質を調整してからは、レコーディングのとき以上に声優さんたちそれぞれの生声の特徴がはっきりとわかったり、意外な発見がたくさんありましたね。

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