音とデザイン 第4回 現代アートから「世界の見方」を学ぶ
コンセプター坂井直樹さん×Sumally代表 山本憲資さん
「モノを資産として持つ」ハードルを下げたい
坂井:山本さんはまだまだしゃべり足りないかもしれませんが(笑)、そろそろまとめに入りたいと思います。最後の質問は、これから挑戦したいことについて。さきほどエコシステムの構築に興味があると話してくれましたが、思い描いているビジョンはありますか?
山本:いま僕らが事業として取り組んでいる「モノを預かる」ことの先にあると思いますが、次のステップはみんなが「モノを資産として持つ」ことに対して、ハードルを下げたいと考えています。
坂井:詳しく聞かせてください。
山本:日本の二次流通の市場は、基本的に、相場を隠すことでビジネスが成り立っています。消費者からできるだけ安く買い取って、高く売る。その利ざやで稼ぐのが、一般的なビジネスモデルです。それに対して僕は、誰もがわかりやすいように相場をオープンにしたらどうだろう、と思っています。
坂井:公開株の考え方に似ていますね。
山本:そうです、そうです。モノについても、二次流通市場で安定した価値を保てる商品に関しては、価値を可視化できる状態にする。すると、モノの買い方が変わる気がします。たとえば、スーツケースを買う時。2万円の「スーツケースA」を買って2年で捨てることもできるし、7万円だけど将来は5万円で売れる「スーツケースB」を選ぶこともできる――。支払う金額は同じだけど、買い物に選択肢が増えて楽しくなるだろうし、長く価値を保つものを大事にすることがトレンドになっていくかもしれません。
坂井:実現すれば、サステナブルな取り組みとして、共感する人が出てくるのではないでしょうか。そんなふうに考えたきっかけはあったんですか?
山本:誰もが知る『ドラゴンクエスト』の世界が近かったりもするんですよね。RPG全般ですが、ゲーム内の「武器」は、必ず元値の半額で売れるようになっています。これは、資産の価値が可視化されている、と言える状態で新しいアイテムを買いたい時は、武器の資産価値と(ゲーム内の)手持ちのお金の合計が自分の資産だと、皆、無意識的に理解しているんですよね。ああいう感覚を、リアルな世界でも実現できたら面白いと考えています。
坂井:なるほど。いまでも不動産や自動車、あるいは貴金属は資産として持つ感覚があるけれど、より幅広いモノにも拡張していきたいということですね。
山本:はい。そうしたほうが、商品の流動性が高まるだろう、と。ようするに、商品をより換金しやすくして、それによるトランザクションから収益を出せるようなエコシステムを生み出せたら、と考えています。わくわくする未来像を描きつつも、既存の事業をさらに伸ばせるよう、まだまだ頑張っていきたいと思います!
坂井:山本さんのこだわり、そして生き方の信念が伝わってくるお話を聞いて、心を揺さぶられました。今日はありがとうございました。しばらく会わないうちにビジネスパーソンとして進化していて驚きましたし、楽しそうな生活を送っていてうらやましい(笑)。山本さんは好きなことをとことん追求するけれど、それほどお金に頼らない生き方をされている。その一方で、ビジネスパーソンとして多額の資金を動かして、数値目標を掲げて挑戦を続けていらっしゃる。その対照的なところが面白いというか、バランス感覚に優れた人だと感じました。これからも自社の成長だけでなく、志高く、社会の仕組みを変えてほしいと願っています。