るな氏と同じ音質で、るな氏の好きな曲を聴く幸せ
昨年11月にソニーのテーラーメイドイヤホンJust earブランドから、自らの好みの音質にチューニングしたコラボレーションモデル「XJE-MH/LUNA」が発売された春奈るなさん。そんな彼女が、このたび「XJE-MH/LUNA」でぜひとも聴いてもらいたい11曲をセレクトしてくれしました。
コンセプトは「るな充が、るな氏モデルのJust earで、るな氏の選んだ音楽を聴いたら、同じ月明かりの下でるな氏がとなりにいるような気がする」。選曲はまさにるな氏が日頃愛聴している楽曲の数々です。
ところがその内容はなかなかに意外。言われてみれば確かに「春奈るならしい」ものの、ゴシッキーなギターロックあり、ミニマルなテクノあり、ダルなビートのヒップホップありとバラエティーに富みまくっています。しかも、どの曲もるな氏曰く「高音の鳴りには特にこだわった」という「XJE-MH/LUNA」で聴くと、ハイレゾ音源やCD音源よりも音質が低いとされるサブスク音源ですら、その表情をクリアに見せることに。ぜひともチェックしてみてください。
☆select1☆
YURiKA「鏡面の波」
地球に6度飛来した流星の影響で、"にんげん"が宝石=無機物の身体を持つ生命体に変異した世界を描く、テレビアニメ『宝石の国』のオープニングテーマ。そんなアニメ関連の楽曲だからか、アニソンシンガー・YURiKAの歌うテーマソングも"らしい"ものに。ピアノとギターのアルペジオが交錯する、うっかりするとリズムを見失いそうになるポストロック的なトラックに彼女一流のはかなげなハイトーンボイスがのる、スムーズながらもストレンジな1曲に仕上がっています。この曲をプレイリストの1曲目にセレクトするあたり、るな氏のセンスのよさ、そしていい意味での変態性がうかがえます。
☆select2☆
ナノ「DREAMCATCHER」
一見ノンキなタイトルとは裏腹に、美少女キャラクター同士がハードかつ暗いデスゲームを繰り広げるアニメ『魔法少女育成計画』のエンディングテーマが、ナノの「DREAMCATCHER」です。2000年代以降といった趣のラウドロック・ヘヴィロックで鳴らすナノですが、この曲ではそのトーンはやや抑えめ。大きなアリーナやスタジアムでのライブがよく似合う、スケール感のある正統派ロックナンバーを歌い上げています。それだけに「DREAMCATCHER」では性別不詳とされているナノならではのボーイソプラノを思わせるハイトーンボイスを落ち着いたトーンでたっぷり聴かせてくれます。
☆select3☆
周圭斗(CV:立花慎之介)「Black Black Love」
スマートフォン用ゲームアプリ『ボーイフレンド(仮)』の登場人物・周圭斗(あまね・けいと)のキャラクターソング。その楽曲はピアノとストリングスをフィーチャーし、またBメロで3拍子にテンポチェンジするなど、いわゆる陰キャで天邪鬼なキャラクターが歌うのがよく似合うゴシック調の1曲に仕上がっています。「XJE-MH/LUNA」のプロトタイプモデル、つまりるな氏が自分用にJust earを作ったとき「このイヤホンで聴くと推しキャラクターの声がさらに尊くなる」と語っていたとおり、このイヤホンで聴くと周の担当声優・立花慎之介さんの高飛車かつ、どこかエロティックなボーカルを存分に楽しめます。
☆select4☆
alom「恋する乙女は雨模様」
alomは、寺田真奈美と小室さやかからなるボーカルユニット。「恋する乙女は雨模様」は彼女たちのデビュー曲にして、るな氏の推しアニメ『イナズマイレブン アレスの天秤』のエンディングテーマです。テクノポップユニットを標榜とするalomらしく、オートチューンを駆使した、いわゆる"ケロった"歌声をエレクトリックなトラックに乗せて、80年代歌謡・シティポップを思わせるレトロなメロディを歌い上げます。しかも2人のボーカルの掛け合いは見事のひと言。ソロボーカリストとして活躍する、るな氏は彼女たちのコーラスワークをいかに聴いているのか? 想像を巡らせてみても面白いかもしれません。
☆select5☆
植松伸夫「Battle in the Forgotten City」
この曲は、るな氏のフェイバリットゲームのひとつ『FINAL FANTASY』シリーズの1作『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN』のサウンドトラックの1曲。クワイア(ゴスペルの聖歌隊)を思わせる端正な男性混声合唱と勇壮なストリングスのループが四つ打ちドラムとブーミーなシンセベースに乗っかるミニマルテクノを思わせる楽曲です。「XJE-MH/LUNA」で聴くと、るな氏が同機をチューニングする際に意識した弦楽器の美しい鳴りを存分に楽しめる上に、テクノミュージックならではのヘヴィな低音も味わうことができます。
☆select6☆
植松伸夫・河盛慶次「The Chase of Highway」
続く「The Chase of Highway」もゲーム『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN』のサウンドトラックに収められた楽曲です。主人公が敵方3兄弟とハイウェイでカーチェイスを繰り広げる場面でのBGMらしく、疾走感あふれるサウンドが耳を引きます。由緒正しいハードロックギターのリフ、レゾナンスを開閉しまくるシンセサイザーシーケンス、音をあえて汚したドラムパターンが絡まり合う、往年のビッグビートを彷彿とさせるエキサイティングな仕上がりになっています。ガーリー&ゴシックなロリータルックのイメージの強いるな氏が、このブチアゲ系のダンストラックをセレクトしている意外性を楽しみましょう。
☆select7☆
植松伸夫「J-E-N-O-V-A」
作家名からもわかるとおり「J-E-N-O-V-A」も『FINAL FANTASY』シリーズの楽曲。『FINAL FANTASY VII』のボスの1人・ジェノバとの対決シーンで流れるBGMです。その内容はアナログシンセサイザーのような音色のシンセベースが8分音符でルート音を刻み、軽快なギターカッティングが魅せる、80年代のニューウェーブやエレクトロ・ポップを思わせる、オールドファッションなものとなっています。「Battle in the Forgotten City」から「J-E-N-O-V-A」まで通して聴くことで『FINAL FANTASY』シリーズのサウンドトラックのバラエティーの豊かさ、そしてるな氏の音楽の趣味の多彩さを知ることができるはずです。
☆select8☆
Guiano「波に飲まれる前に」
Guianoは2014年から音楽活動を始めたボーカロイドプロデューサー(ボカロP)。EDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)からアコースティックなバラードまで多彩な楽曲を発表し、ニコニコ動画などで高い人気を集めていますが、るな氏がセレクトした「波に飲まれる前に」は、全米ビルボードチャートなどにも見られる今日的な世界標準をにらんだR&Bナンバーです。"ボカロ曲"というとギターサウンドに乗せて、およそ人間には歌いこなせない高速でハイトーンのボーカルを聴かせる楽曲を思い浮かべる人が多いと思われますが、そういう人こそ、ボーカロイドが聴く者をセクシーに踊らせるこの曲に驚かされることでしょう。
春奈るな×Just ear®コラボレーションモデル『XJE-MH/LUNA』
☆select9☆
DECO*27「乙女解剖」
ボーカロイドシーンのパイオニア・DECO*27の2019年発表の楽曲「乙女解剖」は、彼らが開拓した"由緒正しきボカロナンバー"のフォーマットを踏襲しつつも、ボカロの可能性を拡張するものとなっています。高速なギターロックをバックにアイロニカルな歌詞を高音のボーカルを響かせるあたりはまさにボカロ曲らしくあります。ところが途中にメロディがありながらも速射砲のように韻を踏んだフレーズを歌わせる"メロラップ"を挿入してみたり、最終盤に渋いシンセソロを聴かせてみたりと、今なお進化と深化を続けるDECO*27の現在地をうかがうことができます。
☆select10☆
てにをは「ヴィラン」
てにをはは2018年3月のデビュー以来、ハイペースで楽曲を投稿し続けるボカロPです。その2020年2月の作品「ヴィラン」はヒップホップナンバー。レイドバックした16ビートのドラムパターンにチョップ&スクリューさせたギターをループさせ、さらに途中でスウィングジャズライクなフレーズをカットアップしたり、ラストでボカロに巻き舌で歌わせたみたりと、"わかっている"ヒップホップ楽曲を作り上げています。2007年に「初音ミク」が発売されてから十余年。クリエイターのボカロ使いのスマートさ、リッチさの一端を覗かせてくれるはずです。
☆select11☆
春奈るな「美しきセンティメント」
「美しきセンティメント」は2017年発売のるな氏の3rdアルバム『LUNARIUM』収録の1曲。自らも作詞を手がけるシンガーソングライターである、るな氏ながら、この曲に言葉を与えているのは大塚利恵。ところが〈水を切り裂く 乱雑なセリフ〉〈正体の見えない ナイフ〉〈ねえもし 心の傷 目に映るのなら〉〈傷付け合うことなくなるのかな?〉と、SNSなどを通じて、ともすれば心ない言葉を投げつけ合う現代のありようを憂いながらも、〈光だけを 見つめて行こう〉〈わたしのSTORY そう思えるよ〉と締めることで、ボーカリスト・るな氏のステートメントを表明しています。新型コロナ禍に見舞われ、誰もが不安に駆られている今だからこそ聞きたい言葉を最後に届けるあたり、るな氏の時代性・センスを思わせます。
文 成松 哲