今だからこそ聴きたい、
夏アニメ主題歌(後篇)

   この夏放送されたアニメのテーマソングの中でも特に気になる楽曲を紹介する本連載。前回はアニメソングレーベル・ランティスが今夏発表した作品、つまりはアニソンアーティストや声優アーティストの最新ナンバーを取り上げたが、今回はいわゆるJ-POPアーティストやロックバンドの手によるアニメのオープニングテーマ、エンディングテーマに注目してみよう。いずれも当然ながらそのアーティスト、バンド一流のオリジナリティを存分に発揮しつつも、アニメの世界や物語に寄り添った佳曲を作り上げている。

自身一流のやり方で『ノー・ガンズ・ライフ』と向き合うTHIS IS JAPAN

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   THIS IS JAPAN『new world』はアニメ『ノー・ガンズ・ライフ』の第2期エンディングテーマ。2011年に大学のサークル内で結成された4人組。2010年代中盤以降、1980?1990年代に米国を中心に一大ムーブメントを起こしたオルタナティブロックの復権を旗印に全国のライブハウスシーンで活躍し、2020年にメジャーデビュー。『new world』はバンドのメジャー1stシングルの表題曲に当たる。

   〝メジャーデビュー″〝アニメタイアップ″という単語だけ聞くと、インディ時代とはまた違う、いわゆる売れ線狙いの1曲のようにも思えるが、そこは1980年代から今に至るまで「もうひとつの選択肢"(オルタナティブ)」と呼ばれる音楽を選び取った彼らのこと。1コーラス目のAメロではロックバンド然としたキレのいい8ビートを聴かせかと思えば、Bメロでは後ノリでリズムを刻み、サビでは四つ打ちダンスロックに突入。さらに同じAメロでも2コーラス目ではほぼ1コーラス目の同パートのメロディラインをほぼカットして〈瞬間〉〈冷や汗つたって〉、〈警報〉〈鳴り止まないね〉とバンドメンバー同士のコーラスの掛け合いを繰り広げ、また2コーラス目はサビ前にラップパートを放り込むなど、変幻自在でジャンルレスな、まさにTHIS IS JAPANらしいロックナンバーを聴かせてくれている。

   それでいて当然アニメの世界も彼ら流に切り取ってみせている。その歌詞は〈撃鉄起こし暇を持て余し〉、〈歪んだ銃口〉、〈よく狙えよ〉、〈引き金引いて〉と、タイトルどおり、銃がキーアイテムになっている『ノー・ガンズ・ライフ』になぞらえ、さらにギターソロ前に銃声のSEを入れる音での遊びも。ハードボイルドながらもどこかコミカルなアニメの世界を楽曲で彩っている。

   なお『ノー・ガンズ・ライフ』シリーズのテーマソングは、THIS IS JAPANのほか、浅井健一や、作曲家・澤野弘之とJean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)のユニット・SawanoHiroyuki[nZk]:Jean-Ken Johnnyらが手がけている。この顔ぶれからもアニメの持つ手触り・においが伝わってくるはずだ。

THIS IS JAPAN(ディス・イズ・ジャパン)

杉森ジャック(Vo、G)、小山祐樹(G、Vo)、水元太郎(B)、かわむら(Dr、Cho)からなる4人組ロックバンド。2011年上智大学の音楽サークル内で結成。都内ライブハウスを中心にライブ活動を繰り広げると同時に、2014年リリースの全国流通盤『THIS IS JAPAN TIME』など2016年までに1枚のフルアルバムと3枚のミニアルバムを発表する。また「BAYCAMP」「MINAMI WHEEL」「FUJI ROCK FESTIVAL」などの音楽フェスに積極的に出演し、志を同じくするバンド・アーティストを集めたコンピレーションアルバム『NOT FORMAL』シリーズを企画・制作するなど、2016~2017年頃より活動のフィールドを拡大。2018年には三木聡監督の映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』の主題歌にして、主演の阿部サダヲと吉岡里帆が歌う『体の芯からまだ燃えているんだ』をあいみょんとともに制作している。そして2020年2月リリースのシングル『Not Youth But You』でメジャーデビュー。7月にはメジャー初のCD『new world』を発表した。

楽曲情報
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THIS IS JAPAN『new world』
2020年7月29日発売 / Ki/oon Music

【収録曲】
1. new world(作詞:かわむら/作曲:杉森ジャック・小山祐樹・かわむら/編曲:THIS IS JAPAN)
2. RRRIOT(作詞:杉森ジャック/作曲:杉森ジャック/編曲:THIS IS JAPAN)

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