デビュー15周年を迎えた澤野弘之。
劇伴作家として、SawanoHiroyuki[nZk] ではアーティストとして、ドラマティックなサウンドでロマンティシズムとグルーヴ感を追求し続ける
ライブでは低音が、リスニングでは音の広がりが生きるJust ear
――ここからは澤野さんの普段のリスニング環境やJust earについての話も聞かせてください。まず、Just earを知ったきっかけは?
2、3年前ですね。お話をいただく前は知らなかったんですが、ライブで使うイヤモニとしてすごく効果的なイヤホンがあるというのを聞いて、使い始めました。
――最初はライブの現場で使っていたんですね。第一印象はいかがでしたか。
自分の好きなチューニングにカスタマイズできるのが魅力的に感じました。それまでライブで使っていたイヤモニは低音がちょっと物足りないと思っていたところがあって。自分自身を盛り上げるためにも低音が欲しかったんです。ですからJust earは低音を押し出すことを意識して作ってもらいました。ライブでも自分のテンションをあげるのにうまく作用してすごく良かったです。
――Just earは耳穴の型を採取して作るイヤホンということで、イヤモニとしての効果も高かったのではないかと思います。
そうですね。密閉されるので音に集中できるんです。お客さんの反応が聞こえにくくなる部分はあるんですけれど、それでもバンドと一緒にセッションしている臨場感が感じられて演奏もやりやすかったですね。
――今回は再びJust earを作られたそうですが、こちらはどういった経緯で?
Just earのお客さんの中に、僕の音楽を聴くために作る方が少なからずいらっしゃるそうで、新たにコラボのモデルを作るのはどうですか? というお話をいただいて。僕自身も前回はライブでイヤモニとして使用することに特化したチューニングをしたので、今回は一般のリスナーも含め、日常で音楽を聴く前提で、心地よいもの、テンションが上がるようなチューニングをしていただきました。
――前回がステージ用、今回がリスニング用でのチューニングをした、と。方向性の違いはありましたか。
やっぱりライブでは、音を体感したいから音量が大きくなるんですよね。そうすると低音を強めに出してもらってもバランスよく聴けるんです。でも普段のリスニングでは爆音で聴くというよりはせっかく密閉して外界の音を遮断しているのだから、程よい音量で広がりや低音感を感じられるような音になったほうがいいなと思ったので、そのあたりを意識してチューニングしていただきました。
――今回作ったモデルでご自身の楽曲を聴いた感触は?
普段から、ミックスするときには「どうサウンドに広がりをもたせるか」をエンジニアと一緒に試行錯誤して追求している部分があって、Just earで聴くと、その音の広がりとかがよく感じ取れます。自分のイメージしている通りの音が聞こえる。ミックスした時にも、いい形でイヤホンを通して聴ける。その感じがすごくよかったです。
――今おっしゃったように、澤野さんの音楽には空間描写の広がりの要素がありますよね。いろんな音がいろんな場所で鳴っていて、結果としてひとつの壮大な世界を描く曲が多い。音の解像度が高くて、それだけに生々しく聴こえるタイプの音楽という印象があります。
自分自身、そういうものを追求している感じがありますね。作曲の段階で細かい音を入れたりもします。普通に聴いていたら聞こえないような音でも、それがグルーヴの一つの要素として重要だったりするので、ミックスの時にも微々たる量の調整をしている。そういうところがグルーヴ感や音の広がりに作用していると思うので、そのあたりを気にしてミックスしているというのはありますね。