sajou no hanaとして生み出す新たなサウンド。作詞・作曲家 渡辺翔は「更に向こうへ」と進む
sajou no hanaで目指す音
──昨年からはバンドsajou no hanaとしての活動も開始されました。
他の方に曲を提供する形ではやりにくい、もっと踏み込んだ面白い音楽もやっていきたいと、数年前から考えていたんです。アニメ『ニセコイ』でキャラクターソングを丸ごと任せていただいて、1つのプロジェクトのすべてを自分で作り上げる楽しさを知ったのがきっかけでした。
──作曲家が主導でプロジェクトを考える場合、楽曲ごとにボーカリストを迎える形もありますよね。
ですね。でも自分としては「センターポジションのボーカルはいてほしい」というイメージがあったんです。
──3人構成でギタリストではなくベーシストが入っているのは珍しいパターンとも思いました。
ベーシストを選んだわけではなく、キタニタツヤと一緒にやりたかったんです。彼は作曲家としての力もありますがバンド経験もあって、職業作家っぽくない。それに僕より後の世代ならではの感覚もある。彼にアレンジを任せたら自分の曲もアップデートされるだろう、彼がやる音楽を間近で見ることで自分も刺激を受けられるだろう、という期待がありました。そのキタニ君がベーシストだったからベーシストのいる編成になったというだけなんです。
──ボーカルのsanaさんはどういったつながりから?
以前にうちの事務所と『リスアニ!』(アニメソングの専門誌)さんが合同で開催したオーディションに参加していて、僕もそのとき審査員だったので存在は知っていたのですが、その数年後に彼女側で曲を探しているタイミングがあって、僕にも話が来たんです。そこで再び彼女の歌を聴くとオーディションの時よりすごく成長していて、改めて強い印象を受けましたね。
──それでご自身のバンドを始めようと考えた時に彼女の存在を思い出されたと。
ただ、彼女をボーカルに迎えたらハードルは高くなるなとも感じました。当時はパッと突き抜けるストレートな声質のボーカリストが人気を集めていたんですけど、彼女はそうではなく、深く響く声が魅力ですから。でもだからこそ、その声をこれからの時代にフィットさせることができたら面白いなと。僕自身が楽しめる僕が作りたい曲。それでいてsanaちゃんの歌声に合う曲。そこにキタニ君の才能も合わさって、すべてが最高の形で重なってできる曲というのが、sajou no hanaで目指している音です。