イヤホンの歴史 5(最終回) カスタムIEMの普及と最新イヤホンのトレンド

国内でカスタムIEMがオーダーしやすくなる

    そういった状況を一変させたのが、日本発のカスタムIEMブランド、FitEarです。すでにプロフェッショナル向けカスタムIEMを展開していたFitEarですが、2007年より音楽やオーディオファンなどのコンシューマー向け製品として「Private323」(発売当時の名称は「323」)をラインナップ。その後、日本屈指のマスタリングエンジニア、原田光晴氏の名を冠した「MH334」などが登場し、日本メーカーならではのレスポンスの良さもあって、カスタムIEMのリスニングユースは、日本国内でも一気に広まっていきます。また、2010年代に入るとアメリカのカスタムIEMメーカー、Ultimate EarsやWestoneなどが日本国内での展開を本格スタート。カスタムIEMへの注目は、さらに高まっていきました。

Modern Jazz Quartet(モダン・ジャズ・カルテット)やAl Jarreau(アル・ジャロウ)、近年の山下達郎作品など、国内外の著名アーティストのマスタリングを手掛ける原田光晴氏が開発・設計アドバイザーとなった「MH334」(FitEar)。
Modern Jazz Quartet(モダン・ジャズ・カルテット)やAl Jarreau(アル・ジャロウ)、近年の山下達郎作品など、国内外の著名アーティストのマスタリングを手掛ける原田光晴氏が開発・設計アドバイザーとなった「MH334」(FitEar)。

    一方で、2000年代後半にはもうひとつ、アジア系の海外メーカーからはこれまでとは全く違った思想、カナル型イヤホンのカスタム化ともいうべき、リスニングを主眼に置いた製品も登場してきました。それは、ダイナミック型ドライバー搭載モデルやハイブリッドドライバー構成モデルの登場です。

    それまで、カスタムIEMに搭載するドライバーといえばBA(バランスドアーマチュア)型が当たり前(汗対策や遮音性などの観点からBA型以外は適切でないという風潮が当時はありました)でしたが、イヤホンとしては一般的なドライバーユニットである、ダイナミック型を搭載する製品も登場。さらに、BA型とダイナミック型を同時搭載して掛け合わせてサウンドを作り上げる、ハイブリッド構成のカスタムIEMも登場してくるようになりました。ちなみに、世界初のハイブリッド構成カスタムIEMはThousand Sound社の「TS842」だという説がありますが、現在は中国のUnique Melodyがその代表格といえる存在となっています。

   

Unique MelodyのカスタムIEM、「MACBETH Custom」の構造図。ダイナミックドライバー(10mm Dynamic Driver)とBA型ドライバー(High Driver)の両方が搭載されているのがわかる。
Unique MelodyのカスタムIEM、「MACBETH Custom」の構造図。ダイナミックドライバー(10mm Dynamic Driver)とBA型ドライバー(High Driver)の両方が搭載されているのがわかる。
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