イヤホンの歴史 4 カスタムIEMの誕生 ~耳にぴったりのイヤホンが聴覚を守る~

日本発祥のカスタムIEMブランドも登場

    こうしたカスタムIEMの潮流は、しばらく後に日本へも上陸することとなります。その原動力となったのが、日本発祥のカスタムIEMブランド「FitEar」の存在です。同ブランドを展開する須山歯研は、もともと歯科技工や補聴器の製造販売を行うメーカーでしたが、2000年代中頃よりプロミュージシャン向けにステージ用モニターイヤホンのイヤーモールド(シェル部分の製作)を受注し始めたことがきっかけとなり、自社開発のカスタムIEMを発売。現在では、日本人ミュージシャンの大多数、数千人(!)が実際にステージで使用しているという、一大カスタムIEMブランドとなっています。

FitEarの最新カスタムIEMである、「FitEar EST Custom」。BA型と静電型の2種類のドライバーユニットを搭載するハイブリッドタイプで、幅広い音域をクリアに再現し、心地よいサウンドが得られるという。画像提供:FitEar(須山歯研)
FitEarの最新カスタムIEMである、「FitEar EST Custom」。BA型と静電型の2種類のドライバーユニットを搭載するハイブリッドタイプで、幅広い音域をクリアに再現し、心地よいサウンドが得られるという。画像提供:FitEar(須山歯研)

    このように、ミュージシャンの聴覚を守るために生まれたカスタムIEMは、アメリカでスタートし、それが日本を初めとするアジア圏へ徐々に広がっていきました。そして、本来の用途であるプロ用の機材としてだけではなく、一般のオーディオファンからも大いに注目を集め始めるのです。


【筆者プロフィール】
野村ケンジ(のむら・けんじ)
ヘッドホンやカーオーディオ、ホームオーディオなどの記事をメインに、オーディオ系専門誌やモノ誌、WEB媒体などで活躍するAVライター。なかでもヘッドホン&イヤホンに関しては造詣が深く、実際に年間300モデル以上の製品を10年以上にわたって試聴し続けている。また、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNセレクト」コーナーにアドバイザーとしてレギュラー出演したり、レインボータウンFMの月イチ番組「かをる★のミュージックどん丼792」のコーナー・パーソナリティを務めたりするなど、幅広いメディアに渡って活躍をしている。


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