My Sound Story 「私にとって一番いい物を作ってくれますか」に応えてくれた
聞こえなかった音が聞こえるようになった......。近年、オーディオの世界は飛躍的な革新を続けてきました。特にイヤホン&オーディオプレイヤーの高解像化は、音楽がもたらす世界観のリアリティをどこまでも追求できることになりました。
「My Sound Story」第2回目に登場していただく、ねっこさん(仮名)も、好きな声優やアイドルの曲をどこでもライブクオリティで聴けるようにと、リスニング機材の探求をしてきた人物です。そして現在、手にしているイヤホンは Just ear。 ねっこさんがテイラーメイドイヤホンにたどり着いたその経緯を話していただきました。
機械系のエンジニアである、ねっこさん。気になったことは納得がいくまで調べる、強い探求心を持つ方でした。
内田彩さんの曲に合わせてチューニングをしてもらった
――ねっこさん(以下、ねっこ)は2017年に行われたJust earオンリーイベントの 「MHワンフェス」 で、ご自身が使っているJust earのマイチューニングについてプレゼンをしたそうですね。どのようなモデルをお使いなのですか。
ねっこ:音質調整モデルのXJE-MH1です。「MH1 Aya~COLORS~」と名付けています。
チューニングのポイントが書かれたカードによれば、甘く、ささやきのリアリティを伴った声質を求めたようです。
――名前の由来を教えてもらってもいいですか?
ねっこ:声優の内田彩さんの曲に合わせてチューニングをしてもらったんです。内田彩さんの楽曲は「声優だからこそできる多彩な声で色々な世界を作り上げる」をコンセプトに製作されています。実際聴いてみるとどの曲も色々な世界観や声質で作り上げられているのがわかります。その多彩な楽曲(COLORS)を最もうまく鳴らすことができるイヤホンということで「彩(いろどり)」を元に、「Aya」にしました。そういう意味では内田さんの名前と同じになったのは、たまたまなのかもしれません。漢字にすると本人の名前と被ってしまうのでローマ字にしました(笑)。
最初「秋のヘッドフォン祭2015」でJust earを試聴したとき、Just ear開発者の松尾伴大さんに「本当にいいもの、私にとって一番いい物を作ってくれますか?」と尋ねたら「任せてください」というので、内田彩さんのCDを全部、松尾さんに押し付けて事前に聴き込んでもらいまして(笑)。
――それはすごい! イベント後すぐにオーダーしたのですか?
ねっこ:いや、翌年の2016年2月頃でしょうか。最後の引き金となったのは、『ラブライブ!』の「μ's」(ミューズ)のファイナルライブの一般抽選に外れたから(笑)。失意の中の、勢いまかせでのオーダーでした。
※ ラブライブ!
学校統廃合の危機に瀕している、音ノ木坂学院の入学者を増やすべく、9人のメンバーがスクールアイドルグループ「μ's」(ミューズ)として活躍するコミック、アニメ作品。各メンバーを担当する声優たちによるライブや作品が社会現象ともいえる大きな人気を集めた。また、『ラブライブ!』ファンは「ラブライ部員」、「ラブライバー」と呼ばれている。
特定の曲の伸びやかさで音を追い込んだ
――XJE-MH1は音質コンサルタントとマンツーマンで、自分好みの音となるようにテイラーメイドしてくれるモデルですが、サウンドチューニング時はどのようなやりとりがあったのですか?
ねっこ:まず内田彩さんのCDを聴いてもらった松尾さんの感性で、お薦めの音質を用意してもらったんです。その後に東京ヒアリングケアセンター青山店に行き、その音質が反映された試聴用のイヤホンを聴きながら少しずつ調整してもらいました。私はイヤホンに関する知識がないので、どういう音がいいのかあまり言葉では表現できなかったんですけど、実際にチューニングしてる時にいろんなパタ-ンの音を聴いてどれもいいと思いましたし、手厚く相談にのってくれるところに、とても信頼がおけました。
――その時のチェックに使った曲はなんでしょうか?
ねっこ:一応、内田彩さんの曲はチューニング時に全て聴きました。
特に、
「ぶる~べりぃ♡とれいん」(『ラブライブ!』南ことり:cv内田彩)
「さよならの音」(『オトノネ。』琴都:cv内田彩)
「約束の空へ ~私のいた場所~」(『ストライクウィッチーズ』服部静夏:cv内田彩)
などのリファレンス曲を用意しましたが、もっとも聴いたのは「ピンク・マゼンダ」(内田彩)です。チューニングの最後の方は、歌の2番が終わって、その後にグッと盛り上がってくるDメロのところの伸びやかさで追い込みました。
※cv=キャラクターボイス(声優)
オリジナルのモデル名である、"「Just ear XJE-MH1 Aya~COLORS~」"の名が刻まれた金色のプレート。※現在文字刻印サービスは行われていません
ねっこさんがMH1 Aya~COLORS~の刻印を指定した当時の指示書。書体や表記などのわかりやすく、ていねいな指定に、ねっこさんの人柄が垣間見える。
――完成したMH1 Aya~COLORS~の音はいかがですか?
ねっこ:聞こえなかった音が聞こえるようになりましたし、声の伸びも全然違う。綺麗に聞こえるようになりました。イベントで壇上の声優さん・アイドルのみなさんが「この曲はどういうところにこだわってレコーディングしたか」という話をすることがあるんですが、そういうのを知ってから意識して聴くと、歌詞の意味やフレーズのありかたなど、曲をより深く理解できるようになりました。
――カスタムIEMは、ケーブルを交換することでさらなる音質チューニングがしやすいイヤホンですが、 ねっこさんが使っているのは標準のケーブルですね。
ねっこ:はい。このケーブルで音を追い込みましたから、これでいいだろうと...ということにしています。手を出しちゃうとそれこそ沼ですし(笑)
中庸にいくよりは最高峰にいっちゃえ!
――MH1 Aya~COLORS~と合わせているプレーヤーについてお聞かせください。
ねっこ:現在使っているのはAstell&Kern社の「A&ultima SP1000-SS」(以下SP1000)です。単体の音楽プレーヤーは最初「iPod Touch」から使い始めて、「ウォークマンNW-F880」シリーズ、「AK100」「AK380」(Astell&Kern社)を経て、このSP1000を手に入れました。
内田彩さんの声を最も響かせるコンポーネントとしてたどり着いたのが、MH1 Aya~COLORS~とSP1000の組み合わせ。
――XJE-MH1も高価なイヤホンですが、AK380、SP1000もまた高価ですよね。
ねっこ:中庸にいくよりは最高峰にいっちゃえ!と考えたんです。イヤホンも同じで、カスタムIEMって安くても10万円くらいするんですけど、それを複数買って使い回すよりは、ひとつ30万で完結させた方がいいかなと思いまして。
――なるほど、コレクターではない、と。自分にとって本質的に、最高にいいものだけを手にしたいわけですね。
ねっこ:MH1 Aya~COLORS~を作ったときはAK380を使っていました。その後にSP1000が出たのですが、聴き比べて自分好みの音質で、音楽の世界観がより鮮明になるものでなければ買い換えなかったと思います。
ラブライバーの仲間に超高音質リスニングの世界をおすそ分け
――MH1 Aya~COLORS~は初めてのカスタムIEMなのですか?
ねっこ:大学を卒業した時からFitEar社のカスタムIEMを使っていました。だから2台目となります。
――カスタムIEMの前はどんなイヤホンを使っていましたか?
ねっこ:最初はiPod Touchの付属イヤホンでした。これは今でも、自宅で作業用BGMを聴いたり、YouTubeを観たりする時に使っています。でも遮音性が低くて周囲の雑音が入りやすいんですよね。だからBluetoothのノイズキャンセリングヘッドホンに興味をもったのですが、調べていくうちにカスタムIEMの方が遮音性が高いという話を聞きまして。また私は耳穴が小さいので、一般的なサイズのユニバーサルイヤホンだと耳に入りにくいんですよ。
――初めてカスタムIEMを作ったときはどう感じましたか?
ねっこ:全然違う! でしたね。完全にフィットしている感覚で周囲の音もまったく聞こえなくなる。地下鉄を乗り過ごすほどの遮音性の高さにびっくりしました。
――現在の愛機であるMH1 Aya~COLORS~は、どのように使っていますか?
ねっこ:今は主に毎日の通勤時ですね。だから1日2時間くらいです。オーダーした当時は地方にいて、毎週自宅に戻ったり、イベントに行ったりするために夜行バスに乗っていたんですけど、このときもよく使っていました。遮音性が高いしフィットしているから重さも感じないし数時間つけ続けていても耳が痛くならない。バスの中が快適なリスニングルームになるんです。イベントの会場で知り合いと会うと「まずは聴いてほしい」とMH1を渡して聴かせていました。そして「帰るときは自分のイヤホンで音楽を聴いてがっかりしろよ」と(笑)。
XJE-MH1のハウジングは大きめですが、小耳のねっこさんでも自然にフィットする1機となったように、Just earは細部まできめ細やかに作り込んでくれる。
――立派な布教活動じゃないですか(笑)
ねっこ:私の後に、Just earの内田彩さんチューニングモデルを作られた方が何名かいるとも聞きましたよ(笑)
――もし、ほかの方がMH1 Aya~COLORS~を手に入れたとしたら、どんな曲を聴いてほしいですか?
ねっこ:さっき話した「ピンク・マゼンタ」などのリファレンス曲のほかでしたら、「Ordinary」(内田彩)ですね。内田彩さんは2016年末に声帯を手術していますが、その後に録られた曲で、今まで当たり前だったものが当たり前じゃなくなり、それがどれだけ大切なものだったかを気づかされる。内田さん自身やファンとの「今まで」と、「これから」についてメッセージが込められた曲です。ライブでは涙を流すファンもたくさんいます。ぜひ、いい音で聴いてみて欲しいですね。
現在は、「μ's」の活動が一区切りしたため、「μ's」声優のソロ活動イベントや、声優アイドルユニット「サンドリオン」のライブによく行っているという、ねっこさん。大好きな音楽、心に響く歌詞だからこそ、最高の音質で聴きたいという気持ちが強く伝わるインタビューでした。
聞き手:武者良太
1989年よりライターとして活動をはじめたフリーライター。2019年で執筆・編集歴30年。ライターとしての現在の主軸はオーディオ、デジカメ等ガジェットレビューで、ブロックチェーン、AIなど先端技術のコラムや取材記事も担当。現「ds」 WEBディレクター。元KOTAKU Japan編集長。
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テイラーメイドイヤホン「Just ear」
XJE-MH1 音質調整モデル
各購入者に対してヒアリングを行い音質が決められるモデルです。
価格:30万円・税別(インプレッション費用は別途かかります)
XJE-MH2 音質プリセットモデル
あらかじめ設定された3つの音質バリエーションである「モニター」、「リスニング」、「クラブサウンド」から選択します。
価格:20万円・税別(インプレッション費用は別途かかります)
試聴は東京ヒアリングケアセンター青山店や、ソニーストア(銀座、名古屋、大阪、福岡天神、札幌)などで可能です。詳しくは下記のJust ear公式サイトをご覧ください。
https://www.sony.co.jp/Products/justear/