音の匠にきく 補聴器の技術が生きるカスタムIEMの耳型採取
東京ヒアリングケアセンター 菅野 聡氏

特殊な耳型採取器具が必要だった
こだわり尽くしたJust earの製品づくり

    ――そういった耳型採取サービスのスタートが、Just earとの協力関係につながっていったのでしょうか。

    はい、その通りです。こちらで耳型採取サービスを行っていることを、Just earを展開しようとしていた松尾さん(松尾伴大氏 ソニーでヘッドホンやイヤホンを設計する音響エンジニアで、Just earプロジェクトリーダー)が知り、声をかけていただきました。最初は耳型を採取するだけの予定でしたが、話しているうちに、だんだんと話が進んでいき、特殊な耳型採取器具を作ることになったり、東京ヒアリングケアセンターを使ってサウンドチューニングを詰めていくこと(※)になったりと、深く関わらせていただくことになりました。
(※Just earのXJE-MH1では、松尾氏を含む3名のソニーの音質コンサルタントが購入時にカウンセリングを行って、ユーザーの好みの音質にカスタマイズできる)

    ――この耳型採取器具、かなり特殊なデザインとなっていますが、完成にはやはり菅野さんが携わっているのでしょうか。

    ドライバー位置を一定のポジションにしっかり固定したいという、松尾さんからのリクエストに応えるために作ったものです。最初は手に取ってドライバー位置を決めるように考えたのですが、それだと作業効率が悪く、狂いも生じやすいことから、次は耳掛け方を試し、最終的にはヘッドホンタイプとなりました。Just earは厳密にドライバー位置を定めているため、1mmの狂いもなく、ユーザーそれぞれにベスト位置を見つけ出さなければなりません。そのためには、こういった器具が必要でした。また、Just earは13.5mmという大口径のダイナミック型ドライバーを採用しているため、うまく作らないと耳からかなりはみ出てしまいます。それは美しくない! と個人的に思いましたので、イヤホン本体をできるだけ薄く作るためにも、この専用器具は必要でした。

研究を重ねて開発された耳型採取器を装着する菅野氏。この器具で繊細な調整を行うことで、ドライバーの位置が決定する。
研究を重ねて開発された耳型採取器を装着する菅野氏。この器具で繊細な調整を行うことで、ドライバーの位置が決定する。
耳型を取るシリコンを流し込むための特殊な器具。より使いやすいように改良したとのこと。
耳型を取るシリコンを流し込むための特殊な器具。より使いやすいように改良したとのこと。
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