My Sound Story 扱いやすさを追求すると Just earにたどり着いた

   オーディオにこだわりを持つ方々に、購入したきっかけや使い心地を伺うコーナー、「My Sound Story」。初回はソニーの"テイラーメイドイヤホン"である「Just ear」を購入した、ゆーろさん(仮名)にお話を聞きます。

   ゆーろさんは、Just earを購入してから、Just earユーザーのイベントのお手伝いをするほどのファンとのこと。Just earは一人ひとりの耳の型を取ることもあって、メーカーとユーザーの距離が近くなることも魅力のひとつかもしれません。さて、どんな話が飛び出すのでしょうか。

少しミステリアスな雰囲気のゆーろさん。長身でとてもおしゃれな方でした。都内在住で輸入インテリア関係のお仕事をなさっているそうです。
少しミステリアスな雰囲気のゆーろさん。長身でとてもおしゃれな方でした。都内在住で輸入インテリア関係のお仕事をなさっているそうです。

ヘッドフォン祭で偶然Just earに出会った

   ――さっそくですが、お使いのイヤホンを見せてもらえますか?

   ゆーろさん(以下、ゆーろ):これが私のJust ear XJE-MH2です。もう使い始めて4年目ですね。

Just ear XJE-MH2と専用キャリングケース、そして重厚感ある謎の音楽プレーヤーが。
Just ear XJE-MH2と専用キャリングケース、そして重厚感ある謎の音楽プレーヤーが。

   ――透明で綺麗ですね。本体に「SONY」のロゴが入っていない?

   ゆーろ:初期のタイプには入っていませんでした。2015年の4月にJust earの販売が始まって、私は直後の6月には購入しました。

   ――ゆーろさんはJust earの発売を待って購入したのでしょうか?

   ゆーろ:いえ、中野で定期開催されている、ヘッドホンのイベントに初めて参加したのがきっかけでした。会場でJust ear開発者の松尾さんに声を掛けられたのですが、試聴希望者の列が長くて......。後日、販売店に伺わせて頂きますと伝えました。

   ――中野のヘッドフォン祭は毎回とても盛り上がっているそうですね。Just earの販売店にはすぐに行かれたのですか?

   ゆーろ:次の日に行きましたね(笑)。試聴したら、想像よりも遥かにいいぞ! と心を鷲掴みにされました。あの時、松尾さんに声をかけられて良かった。そうでなければ買っていなかったかもしれません。

   ――偶然の出会いだったということですね。Just earにはいくつかのタイプがありますが、ゆーろさんはどのタイプを選んだのでしょうか?

   ゆーろ:インストゥルメンタルを中心に何でも聴いてしまうので、XJE-MH2の「モニター」です。ケーブルは、Just earが過去に限定で発売していた付属ケーブルの4芯バージョン、それをバランス出力ができる音楽プレーヤーに接続できるようにプラグをカスタマイズしています。

   ――どのようにカスタマイズしたのですか?

   ゆーろ:最近の高音質な音楽プレーヤーの傾向として、通常の倍にあたる4つのアンプを使って音を出す「バランス接続」ができる機種が増えています。バランス接続ができると、ノイズに強くなり、左右の分離感が得られて、楽曲が聴きこみやすいです。難点はオーディオプレイヤーだけでなく、ケーブルやプラグもバランス接続に対応する必要があることですね。知識の敷居は高いかもしれませんが、ソニーストアなどの専門店ならば、対応製品や組み合わせを間違える事なく手にできると思います。

※バランス接続:一般的な音楽プレーヤーやスマートフォンでは、右側プラス、左側プラス、左右のマイナスを共通にしたグラウンドの3接点で接続される「アンバランス接続」という方式を採用している。この方式ではグラウンドで左右の信号が混信するデメリットがある。一方、バランス接続が可能な一部のポータブルオーディオ機器では、グラウンドが無く、左右の信号をそれぞれ分離できるので、音源本来のステレオ感が得られるという。
左/ゆーろさんのJust earのプラグ。期間限定販売されていたJust earの4芯ケーブルを、バランス出力ができる音楽プレーヤーからの4接点の信号が受けられるようにカスタマイズされている。右/こちらは一般的なイヤホンやヘッドホンのプラグ。2つの黒い絶縁体で区切られた3接点となる。「3極タイプ」とも呼ばれる。
左/ゆーろさんのJust earのプラグ。期間限定販売されていたJust earの4芯ケーブルを、バランス出力ができる音楽プレーヤーからの4接点の信号が受けられるようにカスタマイズされている。右/こちらは一般的なイヤホンやヘッドホンのプラグ。2つの黒い絶縁体で区切られた3接点となる。「3極タイプ」とも呼ばれる。

イヤホンのプラグだけでなく音楽プレーヤーも
とんでもないカスタマイズが!

   ――こちらが先ほどお話しされた、バランス出力ができるプレーヤーですか。

   ゆーろ:Lotoo(ロトゥー)というメーカーのPAW Goldといいます。でも、これは本来バランス出力ができないんですよ。もともと3.5ミリのフォンアウトに加え、3.5ミリのラインアウトが備わっていましたが、それを取っ払って、2.5ミリのプラグが使えるようにしてあります。さらに、中にバランス回路を突っ込んでもらってバランス出力ができるようにしてもらいました。Paw Goldの定価は28万円ほどですが、改造を重ねていくうちに本体の金額を上回ってしまいました。

   ――そんなに高いんですか、これは!

   ゆーろ:ニッチな世界ですが、近年は知識ある個人や、いわゆるガレージメーカー(小規模生産のメーカー)の存在が目立っています。ケーブルや機器の改造に特注など、彼らのお陰で容易に実現出来るようになっている印象です。私の場合、民生品だとコスト的に使えないパーツがありますが、コストを一切無視して、好みに合わせたカスタマイズをしてもらいました。

Paw Goldは音質を追求するためのプロ仕様の技術が盛り込まれている。ボディは航空機グレードのジュラルミン削り出し、液晶画面はサファイアガラスととても頑丈。
Paw Goldは音質を追求するためのプロ仕様の技術が盛り込まれている。ボディは航空機グレードのジュラルミン削り出し、液晶画面はサファイアガラスととても頑丈。

補聴器の技術があるから長時間使える

   ――イヤホンも音楽プレーヤーも、大変なこだわりをお持ちであることはわかったのですが、ヘッドホンやイヤホンにはいつ頃からこだわり始めたのですか。

   ゆーろ:Just earを購入する一年ぐらい前なので2014年頃です。デスクトップパソコンで何か作業をしているときって音楽を聴きたくなるじゃないですか。でも当時最高峰のヘッドホンを購入してみたのですが、なかなか満足できなくて。いろいろ調べて、キチンと聴いてあげるには、それなりの試行錯誤と7桁くらいは必要......、と見積もりまして(笑)。ポータブルオーディオならば、PCオーディオ環境と比較するとケーブルや機器の点数が少なく済みますので、悩まずに聴ける音が出そうだなと。案外多い外出時の楽しみにもしてしまおうと、ポータブルにパッと移行しました。

   ――そこからイヤホンにハマっていった?

   ゆーろ:外で使っていると、音質のほかにも、遮音性や装着感も気になりますし、なるべくしてなるこだわりの始まりですね。それでカスタムイヤモニを使い始めて、その2台目がJust earでした。

※カスタムイヤモニ:カスタム・インイヤーモニターの略称。インイヤーモニターはミュージシャンがコンサートなどで周辺の雑音を遮断し、自らの楽器や他楽器の音をしっかり聴くために使われる。

   ――ひとつめのカスタムイヤモニで満足できなかった原因は?

   ゆーろ:ひと言でいうと、取り回しの問題です。聴き比べたことが無い人には「冗談だろ」と言われがちなのですが、イヤホンはケーブルで音が断然変わってしまうんです。付属品ではなく、サードパーティーのケーブルで真価を発揮するイヤホンも多くて......。ちょうど私のイヤモニもそれに当てはまってしまい、聴こえ方が良い方に大化けしたケーブルは数万円する上、取り回しがいいとは言えず。嫌なら使わなければいいのですが、人間一度味わったり、聴いてしまったりすると簡単に忘れられないんですよね(笑)。ここでJust earの出番なのですが、標準で付属するケーブルとの相性が非常に良く、取り回しがこれ以上ないほどに良いです。やはりオリジナルが合うと気が楽です。

   ――「取り回し」というのは、扱いやすさや持ち歩きのしやすさのことですか?

   ゆーろ:そうですね。実用面だと、Just earは耳の穴に入る先端部分が柔らかいことも大きいです。Just earの先端部分は体温で温まり、短時間でより一層フィットしていきます。Just earは毎日の通勤はもちろんですが、3~4時間平気で使っていられます。飛行機内での耳栓代わりに16時間着けていたのが最高記録ですね。

   ――そんなに長く! 長時間装着できるのは補聴器の技術があるからなのでしょうか。

   ゆーろ:補聴器を作る技術や、耳に親和性が高い材質が使われているのはもちろんですが、なにより自分の耳の形ぴったりだというのが強く実感できますね。普通のイヤホンやヘッドホンは、どこかに何かを当てたり、引っ掛けたりして、落ちない仕組みになってますよね。個人差はありますが、長時間少ない点に圧力がかかるとどうしても痛くなります。Just earは耳全体、点より面で優しく、押し付けずにフィットするからこそ、長時間使えるんだと思います。

聴く音源を良くするというより、悪くなくしたい

    ――そもそもゆーろさんが、そこまで音にこだわるようになったきっかけを教えてください。

    ゆーろ:僕のこだわりはこれです、ということは特別にはないです。僕の中では、あくまでも必要性に迫られてこうなっています。前は外でもヘッドホンを使っていて、今よりも小さな音楽プレーヤーにポータブルアンプを繋げて聴いていました。でも、音楽を聴いているうちに、雑音が聞こえてきて、なんか気持ちが悪いぞと。音を良くしたいというより、感覚的には「悪くなく、したい」。水道からミネラルウォーターが出なくてもいいけど、濁ってないのが合格点、という感覚です。水道水を美味しく飲みたいなら、古いビルには住まないとか、浄水器をつけるとかあると思うのですが、オーディオの音質改善も、当たり前の所から始まりがちなんですよ。結局、プレーヤーとポータブルアンプを繋ぐケーブルを高性能なものに変えたり、調べつくこと、思いつくこといろいろと試したりしたのですが、あまり変わらなくて限界を感じていました。で、聴く音源のほうは良くならないの? と、リッピングを突き詰めると、音が悪くなくなっていったんです。

   ――普通はリッピングを突き詰めないかと(笑)! リッピングで音質が変わるのは、iTunesなどの音楽ソフトの性能や設定次第ではないでしょうか?

   ゆーろ:ソフトはもちろんですが、CDを読み込むドライブから換えますね。ドライブの電源をどうするか、そのドライブの水晶振動子とか、コンデンサも取り換えちゃいます。

※リッピング:音楽CDに記録されているデジタル形式のデータを抽出し、パソコンで処理できるようなファイル形式に変換して保存すること。

   ――ハードを改造するということですか! なんとも奥深い世界です。

音を「悪くなくしたい」というゆーろさん。良くない音を聴くと耳が熱くなる気がするという。
音を「悪くなくしたい」というゆーろさん。良くない音を聴くと耳が熱くなる気がするという。

クリアーで主張しすぎないデザインも気に入っています

あえて「スマホ」を持たないというゆーろさんの鞄の中身。性能と取り回しのしやすさ、価格のバランスを考えて抜いて厳選されたものばかり。美しい鞄は、東京・表参道のHERZでセミオーダーしたという。
あえて「スマホ」を持たないというゆーろさんの鞄の中身。性能と取り回しのしやすさ、価格のバランスを考えて抜いて厳選されたものばかり。美しい鞄は、東京・表参道のHERZでセミオーダーしたという。

   ――最後にJust earを買って良かったと実感するポイントを教えてください。

   ゆーろ:Just earを日々のお供に連れ添い、丸3年になります。なんといっても丈夫だし......、取り回しがいいです。

   ――やっぱり取り回しなんですね(笑)。Just earは設計的に頑丈に作られていると感じますか?

   ゆーろ:Just earは一つひとつ手作りですし、国内生産だからこそアフターサービスの近さに安心できるのは大きいと思いますよ。

   ――修理やメンテナンスなどのアフターケアがしっかりしてるそうですね。

   ゆーろ:長く使っている理由には、Just earのデザインが好きだからというのもあります。クリアーで主張しすぎないカッコよさがある。シンプルなカッコよさって、なかなかお目にかかれないなと。

   ――ゆーろさんのお話を聴いて、私も欲しくなりました。価格がちょっとお高いですが......。体験会やお店で試してみます!

   ゆーろ:僕も最初は「イヤホンに10万円!? 一体どんな人が買っていくんだろうか......」と思っていましたから(笑)。日用の靴やカバンに良い物があるように、イヤホンにも素晴らしい物があるのを、ぜひとも実感して頂きたいですね。カスタムイヤホンに興味のある人はJust earを一度は試聴してみて欲しいと思っています。

ゆーろさんは、終始とても落ち着いて論理的な話し方をされていましたが、なんとまだ20代ということで驚きました! これからも音の世界を探究し続けて欲しいです。
ゆーろさんは、終始とても落ち着いて論理的な話し方をされていましたが、なんとまだ20代ということで驚きました! これからも音の世界を探究し続けて欲しいです。

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テイラーメイドイヤホン「Just ear」

XJE-MH1 音質調整モデル
各購入者に対してヒアリングを行い音質が決められるモデルです。
価格:30万円・税別(インプレッション費用は別途かかります)

XJE-MH2 音質プリセットモデル
あらかじめ設定された3つの音質バリエーションである「モニター」、「リスニング」、「クラブサウンド」から選択します。
価格:20万円・税別(インプレッション費用は別途かかります)

試聴は東京ヒアリングケアセンター青山店や、ソニーストア(銀座、名古屋、大阪、福岡天神、札幌)などで可能です。詳しくは下記のJust ear公式サイトをご覧ください。
https://www.sony.co.jp/Products/justear/

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