覚せい剤と同様の成分を含む危険な「ダイエット薬」が出回り、健康被害が続出しているため、2017年11月、東京都と厚労省が連名で「絶対服用しないように」と異例の警告をした。
これはタイの病院が開発した肥満症治療薬というふれこみで、「ホスピタルダイエット」としてネット上で話題になっている薬品だ。日本では認可されていない危険な成分も含んでおり、個人輸入代行サイトを通して入手する女性が後を絶たない。すでに4人の死者が出ている。
呼吸困難、意識混濁、幻覚、吐き気、肝機能障害の事故
東京都健康安全部薬務課が11月9日に発表したプレスリリースによると、都内の20代女性が「MDクリニックダイエット」という薬品をタイから個人輸入して服用したところ、おう吐と手足のしびれを訴え、医療機関を受診した。「MDクリニックダイエット」とは、タイ・バンコクの中心部にあるダイエット専門の医療機関「MDクリニック」が開発した肥満症の治療薬だ。バンコクにはもう1つ「ヤンヒーホスピタル」というダイエット専門病院もあり、ここでも肥満症の治療薬を開発、訪れる患者に医師が処方している。
タイでは、モデルや女優、アナウンサーらがこうした薬でダイエットすることが流行しており、「MDクリニックダイエット」や「ヤンヒーホスピタルダイエット」などと呼ばれている。そして、これらの病院で開発したダイエット薬が2002年頃から個人輸入代行サイトを通して日本国内に出回るようになった。
東京都から連絡を受け、厚労省医薬食品監視指導・麻薬対策課も11月9日にタイ製ダイエット薬品の過去の事故を発表、「服用すると命の危険があるばかりが、日本では禁止されている薬物(向精神薬)を含んでいる場合があり、個人輸入であっても麻薬取締法に違反する」と警告した。
厚労省の発表資料によると、2002年以来、東京、神奈川、山梨、愛知、福岡、大分などの都道府県で、医療機関から報告を受けただけで20件の呼吸困難、意識混濁、幻覚、吐き気、めまい、肝機能障害などの事故があり、うち4人が急性心不全などで死亡している。
現地タイでは医師が、患者の肥満度に応じて薬を処方、段階を追って薬の量や強さを調合するが、日本では薬の説明書に書いてある体重・身長と薬の量・強さの対照表を見ながら、購入者が自己流で飲んでいるのが実情だ。しかも、日本では認可されていない成分が多く含まれている。例えば、「シブトラミン」という薬剤はもともと抗うつ薬として開発されたが、強い食欲抑制効果があり、ダイエット薬として注目された。しかし、血圧上昇、心拍数増加、頭痛などの副作用が強いため、日本では承認されていない。
覚せい剤と同じ働きをする成分が
また、「マジンドール」は日本で認可されているが、合成覚せい剤成分のアンフェタミン類と似た働きをする。主に深刻な肥満症患者の治療に使われる向精神薬で、投薬には医師の処方が必要だ。脳の中枢神経に作用し、満腹感を与えることで食欲を抑えるが、呼吸困難、胸痛、失神、抑うつ、幻覚、けいれんなどの副作用も伴うので、自己流で服用するのは危険だ。
東京都は発表資料の中でこう呼びかけた。
(1)現在、「MDクリニックダイエット」や「ヤンヒーダイエット」を服用している人は直ちに中止し、医療機関を受診する。
(2)個人輸入した製品の中には、危険な成分が含まれているため、すでに服用している他の医薬品との作用で、重大な健康被害を起こす可能性がある。
(3)個人輸入した医薬品を他人に販売、投与することは違法である。
(4)MDクリニックダイエット関係個人輸入サイト(所在地:タイ)について、厚生労働省に削除要請を行なった。
しかし、J-CASTヘルスケアが調べると、2017年12月4日現在、MDクリニックダイエットの個人輸入サイトはオープンしている。