「病は気から」というが、北海道大学の村上正晃教授(免疫学)らのチームがマウスを使った実験で、ストレスが胃腸の病気や突然死を引き起こすメカニズムの解明に成功した。
研究成果は生命科学専門誌「eLIFE」(電子版)の2017年8月15日号に発表された。慢性的なストレスが消化器疾患や心疾患など様々な病気を悪化させることは経験的に知られているが、分子レベルで発症の仕組みを突きとめたのは世界で初めてだという。
同じストレスを受けても病気になる人ならない人の違い
北海道大学の発表資料によると、研究チームは、慢性的なストレスか?特定の神経回路を活性化させて症状を悪化させるという仮説を立て、その影響や分子構造について調べた。マウスを睡眠不足にさせたり、床敷を濡らしたりするなどの慢性的なストレスを与えた。そのうえでマウスを、特定の免疫細胞を血管に入れたグループと、ストレスを与えるだけのグループの2つに分けた。すると、免疫細胞を血管に入れたマウスの約7割が1週間ほどで突然死した。一方、ストレスを与えただけのマウスは死ななかった。
突然死したマウスを調べると、脳内の血管に微細な炎症があることを発見した。炎症はこの免疫細胞によって引き起こされ、通常はない神経回路ができて胃腸や心臓に機能不全をもたらしたことがわかった。これは、同程度のストレスを受けても、特定の免疫細胞を持つ方が、ストレスを重く受け止め、脳内に炎症ができる可能性を示しているという。つまり、これが「病は気から」ということになる。
村上教授は発表資料の中で「同じストレスを受けても、この特定の免疫細胞の量や脳内の炎症の有無によって、病気になるかどうかが分かれると考えられます。脳の微小な炎症をどうしたら抑制できるかが、ストレスが引き起こす病気の根本的治療につながります」とコメントしている。