「傷はなめると治る」は本当だった! 唾液の成分に細胞組織再生のパワー

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   料理中に指を切る、何かの拍子に皮膚を傷つける。そんな時、思わず傷口をなめたことはないだろうか。「唾液には殺菌力があるというし」と......。この「傷はなめると治る」という都市伝説、唾液は細菌だらけだから返ってよくないという指摘もあり、真偽は定かではなかった。

   そんな中、チリ大学歯科学部の研究チームが、唾液は傷の治りを早くするという研究を発表した。抗菌作用だけでなく、唾液の成分に細胞組織をつなぎ合わせ、傷をふさぐ働きがあることを発見したのだ。

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野生動物が「傷をなめる」理由に意味があった

   チリ大学のチームが研究を発表したのは医学誌「FASEB Journal」(電子版)の2017年8月7日号。同誌のニュースリリースによると、同大学のヴィンセンテ・トーレス博士らは、口の中にできた傷が、ほかのどの部位にできた傷よりも早く治ることに疑問を抱いてきた。そこで、唾液の成分が影響しているのではと考え、唾液中のタンパク質「ヒスタチン-1」に注目した。ヒスタチンは抗菌作用があり、傷をふさぐ効果があることは知られていたが、そのメカニズムはわかっていなかった。

   トーレス博士らは3つのサンプルを使ってヒスタチン-1の働きを実験した。

   (1)口の内皮と血管形成細胞(造血管細胞)を培養したもの。

   (2)動物モデルとしてニワトリの受精卵。

   (3)健康な人の唾液サンプル。

   そして、(3)の唾液サンプルを(1)と(2)に入れて、ヒスタチン-1が細胞組織や血管にどんな影響を与えるか調べた。すると、ヒスタチン-1は血管形成細胞を活発化させ血管を新生させた。さらに、接着剤のように細胞同士をつなぎ合わせ、傷口の組織を再生することがわかった。

   トーレス博士らはプレスリリースの中でこう語っている。

「私たちの研究で、唾液がどうやって傷口早く治すことができるのか明らかになりました。今後は、このヒスタチン-1を使って口腔以外の組織の傷を早く治療する方法の開発を進めます」

   「FASEB Journal」編集長のエディー・ペターソン博士も、プレスリリースの中で今回の研究を絶賛している。

「この研究は外科治療の進歩に大きな貢献をするでしょう。また、野生動物や子どもの多くが本能的に『傷をなめる』ことの意味を突きとめたことも大きい」
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