仕事に集中できない、計画が立てられない、思わずキレて部下を怒鳴る、面談を忘れてすっぽかし取引先から大目玉......。こんな「大人のADHD(注意欠陥多動性障害)」が最近増えているが、わずか6つの質問項目でチェックできることがわかった。
従来、成人のADHDの診断には国際基準に18の検査項目があったが、米マサチューセッツ工科大学のバーク・ウスタン教授らの研究チームが、6項目で判断する新基準を米医師会精神科専門誌「JAMA Psychiatry」(電子版)の2017年4月5日号に発表した。
「誰かに依存」「ギリギリまで先延ばし」もアブナイ
ADHDは、多動性(落ち着きがない)、衝動性(じっとしていることができない)、不注意(うっかりミスが多い)が特徴だ。子どもに特有の発達障害で、成人すると消えると思われてきたが、最近の研究で、そのまま続く人とは別に、大人になってから発症するタイプがあることがわかった。2016年5月に英ロンドン大学が発表した2000組以上の成人の双子を対象にした調査によると、合計166人(約4.2%)がADHDと診断された。しかし、うち68%は子どもの時にどの検査でもADHDと診断されたことがなかった。成人になってから発症する新しいタイプのADHDがあるのだ。
ウスタン教授らは、こうした新しい研究成果をふまえ、新基準を作成した。成人のADHDの診断基準には世界保健機構が作成した「ASRS」という診断表がある。これは質問が全部で18項目あり、その元になっているのが、米国精神医学会が作成した「DSM-5」という診断マニュアルだ。ウスタン教授らはその「DSM-5」作成チームのメンバーで、今回、「DSM-5」の改訂版を作成するにあたり、質問項目を6つに絞った。実際、新基準を成人ADHDの患者637人を対象にテストしたところ、92~96%の精度で診断することができた。
その新しい基準とは次の6項目だ。
(1)直接話しかけられているにもかかわらず、相手の話の内容に集中することが難しいと感じることがあるか。
(2)会議などの着席していなければならない状況で、席を離れてしまうことがあるか。
(3)余暇などで時間に余裕がある時でも、一息ついたり、ゆったりとくつろいだりすることが難しいことがあるか。
(4)会話を交わしている相手の話がまだ終わっていないのに、会話をさえぎったり、途中で割り込んだりして相手の話を終わらせてしまうことがあるか。
(5)しなくてはいけない物事をギリギリまで先延ばしすることがあるか。
(6)日々の生活をスムーズに送るために、誰かに依存することがあるか。
以上の6項目について、(1)全くない(2)ほとんどない(3)時々ある(4)よくある(5)非常によくある、の5段階で回答する。(1)の「全くない」は0点だが、(2)~(5)は項目ごとに2~5点の範囲で加点され、合計点で評価される仕組みだ。(5)の「先延ばし」と(6)の「他人への依存」は従来の診断基準にはなかった項目で、最近の研究でこれらの症状がみられることがわかり、つけ加えられた。6項目が思い当たるようなら、ぜひ専門医を受診しよう。