マダニによる感染症が増加中 「咬まれない」工夫の仕方

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   近年、マダニに刺されることで発症する感染症「日本紅斑熱」の患者報告数が増加している。調査が開始された1999年の累積報告数は39件だったが、2008年には135件、2016年には273件となった。

   かつては人が野外に出る機会が増える夏に多い病気とされていたが、国立感染症研究所によると現在は4月~10月に継続して多く報告されており、2017年3月26日時点ですでに5件報告されている。すでに注意が必要な時期になっているのだ。

  • かなりグロテスクなダニ(画像は感染症研究所「感染症を媒介する昆虫・ダニの仲間」より)
    かなりグロテスクなダニ(画像は感染症研究所「感染症を媒介する昆虫・ダニの仲間」より)
  • かなりグロテスクなダニ(画像は感染症研究所「感染症を媒介する昆虫・ダニの仲間」より)

ともかく咬まれないようにする

   ダニ自体は屋内にもさまざまな種類が生息しているが、マダニは屋外に生息し動物の血を吸う吸血性のダニだ。基本的には吸血源となる野生動物がいる森や草地に生息しているが、農家の裏山や庭、畑、郊外の住宅地でも確認されており、感染症研究所昆虫医科学部のウェブサイトによると都市部でも緑地などにいる場合があるという。

   「日本紅斑熱」はマダニが持つ「リケッチア」という細菌によって引き起こされる。マダニに咬まれてから2~8日で頭痛や全身倦怠感、高熱を発症し、紅色の発疹が手首足首に出現し体に向かって広がるのが特徴だ。

   なぜ今患者報告数が増加しているのか。日本皮膚科学会は公式ウェブサイトで「人間がアウトドアのレジャー、リゾート開発でマダニに出会う機会が増加した」「減反政策、農業従事者の高齢化が引き起こす農耕地の荒廃によるマダニ生息地の増加」「マダニの吸血源である野生鳥獣が狩猟の抑制により逆に増加している」といった要因を挙げている。

   日本紅斑熱が人から人に感染することはないものの予防接種なども存在せず、唯一の予防は「マダニに咬まれないこと」になる。皮膚に取りつかせないことが重要になるので、野外、特に草むらなどで活動する際は皮膚の露出を抑えた服装が基本だ。皮膚科学会は布目が細かく表面は滑らかで明るい色の衣服を推奨している。感染症研究所はシャツをパンツの外に出しているときの脇腹や、靴下とパンツの裾の間などが噛まれやすいとし、シャツをパンツの中にたくしこみ、裾は長靴や靴下の中に入れるよう指導している。

   着用後の服は放置せずにビニール袋に入れて密封し、ダニ付着の有無を調べると屋内への持ち込みも防げるだろう。

   残念ながらマダニ用の防虫スプレーは国内で販売されていない。ツツガムシ用の防虫スプレーが一定の効果は期待できるとされており、補助的な防護手段には使えるかもしれない。

自力で無理に取るのは危険

   もちろん、自分が咬まれていないかの確認も忘れてはいけない。仮に咬まれていたとしても24時間以内に除去すると感染率が低いといわれている。マダニは全長3~8ミリと比較的大きく、吸血時には1~2センチにまで膨らむので目視は難しくない。乳幼児や高齢者は頭部への咬着が多いので、頭部を重点的に調べておこう。

   もし咬まれているのを確認したら、ピンセットなどで無理に取ろうとするのは危険だ。マダニは吸血する際、皮膚にしっかりと固定する成分を出している。無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残ったり、マダニの体液を逆流させてしまったりする可能性もある。払っても取れるような状態でなければ皮膚科で除去や洗浄を受けたほうがいいだろう。

姉妹サイト