中学生がインフル薬で飛び降り死? 子どもを「異常行動」から守るには

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   インフルエンザの薬を飲んだ中学生が、マンションの4階から転落死する事故があった。因果関係ははっきりしないが、インフルエンザ薬には過去にも多くの「異常行動」が報告されている。

   特に未成年が命にかかわる行動に走りやすくなる。どうしたらわが子を悲劇から防ぐことができるか。

  • インフル発症後2日間は注意を(写真は「タミフル」)
    インフル発症後2日間は注意を(写真は「タミフル」)
  • インフル発症後2日間は注意を(写真は「タミフル」)

突然、マンションのベランダから飛び降りる

   中学2年の男子生徒(14歳)の転落死が起こったのは2017年2月14日頃。NHKやフジテレビの2月15日付報道によると、14日13時前、東京都品川区大井のマンションに帰宅した女性から、「室内で寝ていたはずの息子がいなくなった」と110番通報が入った。警察官が周辺を捜したところ、4階の自宅の真下にある地上のフェンスに、服の一部が引っかかった状態の男子生徒を発見した。男子生徒は搬送先の病院で死亡した。

   警視庁によると、男子生徒はインフルエンザとの診断を受け、治療薬の「リレンザ」を服用し、自宅で休んでいた。また、厚生労働省によると、未成年の患者が「リレンザ」を服用した後に、走り出したり、暴れたりする「異常行動」の例がこれまでにも報告されているという。

   この事故を受けて、医薬品医療機器総合機構(PMDA)は2月16日、「インフルエンザ治療薬の服用の有無にかかわらず、インフル発症から2日間は小児や未成年者を一人にしないよう保護者は注意深く見守ってほしい」という注意喚起をメディアに発表した。

   インフルエンザの治療薬には、リレンザのほかにタミフル、イナビルなどがあるが、それぞれの薬の服用後に未成年が「異常行動」をとる例が報告されている。特に、タミフルは2005年~2006年にマンションのベランダから飛び降りて死亡する事件など相次ぎ、社会問題になった。厚生労働省の研究班などが薬との因果関係を調べたが、わからなかった。

   厚生労働省のウェブサイト「インフルエンザQ&A」を見ると、タミフル服用後の「異常行動」について次のような例が紹介されている。

(1)突然立ち上がって部屋から出ようとする。

(2)興奮状態となり、手を広げて部屋を駆け回り、意味のわからないことを言う。

(3)興奮して窓を開けてベランダに出ようとする。

(4)自宅から出て外を歩いていて、話しかけても反応しない。

(5)人に襲われる感覚を覚え、外に飛び出す。

(6)変なことを言い出し、泣きながら部屋の中を動き回る。

(7)突然笑い出し、階段を駆け上がろうとする。

インフル薬すべてに異常な行動の危険性が

   こうした例は10~18歳に多く、インフル発症後2日以内に起きやすい。そこで、厚生労働省は2007年に予防安全対策として、医療機関に次のような通達を出した。

(1)薬との因果関係は不明だが、異常行動が発現されているため、インフルの合併症のリスクが高い患者を除き、タミフルの使用を控える。

(2)「タミフル」を使用した場合は、患者とその家族に対し、異常行動をとる恐れがあることを伝え、少なくとも2日間は患者1人にならないよう説明する。

   ところが、「異常行動」はタミフルだけではなかった。その後、今回問題になったリレンザやイナビルでも同様の事故の報告が相次いだ。厚生労働省の「インフルエンザQ&A」の中の「Q:タミフル以外の抗インフルエンザウイルス薬を使用した場合にも、異常行動(急に走り出す、ウロウロする等)は起きますか? 医薬品を服用しない場合にも異常行動が起きる可能性はありますか?」では、こう答えている(要約抜粋)。

「A:タミフルのほかに抗インフルエンザウイルス薬に、リレンザ、ラピアクタ、イナビル、シンメトレル等がありますが、これらの服用後にも、急に走り出す等の異常行動の発生が認められます。また、インフルエンザにかかった時には、医薬品を何も服用していない場合や解熱剤のアセトアミノフェンだけを服用した後でも、同様の異常行動が現れることが報告されています。自宅で療養する時は、少なくとも発症から2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮してください」

   実際、製薬会社が添付しているリレンザの使用説明書には「この薬の使用後に異常行動などの精神神経症状を発現した例が報告されています」という注意書きがあり、イナビルの使用説明書にも「突然走り出す、飛び降り、その他事故につながったり、他人に危害を加えたりする可能性のある行動も報告されています」と書かれている。

数百万~数十万人に数人が死亡する

   恐ろしくなる話だが、どのくらいの頻度で「異常行動」が起こるのか。2016年1月に厚労省研究班がまとめた「抗インフルエンザウイルス薬の安全性について」によると、2014~2015年シーズンの「薬による異常な行動および死亡症例報告数」は、以下のとおりだった(カッコ内は薬を使用した推定患者数)。

(1)タミフル:異常行動24件・死亡数5人(約288万人)。

(2)リレンザ:異常行動3件・死亡数0人(約137万人)。

(3)イナビル:異常行動5件・死亡数1人(約380万人)。

(4)ラピアクタ:異常行動0件・死亡数2人(約21万人)。

   数百万~数十万人に数件とはいえ、インフルエンザにかかったお子さんには十分注意してあげたい。

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