免疫細胞にがん細胞への攻撃を促す「ナチュラルキラーT細胞」(NKT細胞)を、人間のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作ることに京都大iPS細胞研究所の金子新准教授らの研究チームが成功した。
無限に増やすことができるiPS細胞を使うため、がん患者の免疫機能を高める新しい治療法への応用が期待できるという。論文は米科学誌「ステムセル・リポーツ」(電子版)の2016年2月10日号に発表された。
免疫細胞の中には、がんや病原体を直接攻撃する役や、見張り役など様々な役割を持つ細胞があり、全体でチームを作って体を守っている。NKT細胞は攻撃役や見張り役の細胞を活性化させて働きを高める、いわばバックアップの「下支え役」だ。研究チームはこのNKT細胞に着目した。
そして、健康な人の血液からこの細胞を採取してiPS細胞に変え、5週間かけて再びNKT細胞に戻すことに成功した。こうして若返った「再生NKT細胞」は、他の免疫細胞の活性化を助ける機能を維持していたほか、通常のNKT細胞にはない、がん細胞を直接攻撃する能力も備えていた。「血液のがん」白血病の細胞で実験すると、約6割のがん細胞を死滅させた。
金子新准教授は「ほかの免疫細胞と組み合わせれば、様々な治療に応用できると思います」とコメントしている。