日本女性「やせすぎ」で限界寸前 摂取カロリーは戦後の食糧難より低い

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【クローズアップ現代】(NHK)2015年10月5日放送
ニッポンの女性の"やせすぎ"!? "健康で美しい"そのコツは

   多くの女性があこがれるスリムなボディー。だがそこに落とし穴がある。日本人女性の8人に1人がやせすぎだ。女性が本来必要とする摂取カロリーは1日に1950キロカロリーだが、厚生労働省の調査では、20代女性の平均は1625キロカロリー。これは戦後の食糧難の時より低い。

   番組の冒頭、過剰な食事制限を15年間続けている女性が登場した。都内に住むYさん、34歳。肥満度指数のBMIは17.1。BMIは22前後が標準で、18.5未満だと「やせ」といわれる。Yさんの1日の食事が紹介された。朝食はヨーグルトとアーモンド、いちじく2つ。昼食はサラダとキッシュ。間食に板チョコを1枚の3分の1。夜食はナッツをつまむだけ。これで1日の総合カロリーは1009キロカロリー。必要カロリーの半分しかない。19歳の時、海外留学で7キロ増えて帰国すると、「なんでそんなに太ったの?」と会う人ごとに言われたのがきっかけだ。Sさんはいう。「食事を以前の3分の1に減らしました。もっとキレイにならないといけないと思って」

  • 食事制限だけのダイエットは危険
    食事制限だけのダイエットは危険
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マネキンまで昔よりやせている

   女性を「やせないと」と追い込む圧力はファッション業界からもうかがえる。マネキン制作大手「吉忠マネキン」の岡田茂雄さんが、15年前のマネキンに現在の細身のジーンズをはかせてみせた。ウエストのボタンがきつくて閉まらない。岡田さんがいう。

「昔に比べてマネキンの腕や肩幅が格段に細くなっています。こんなことしていいのかなと思うほど、細いマネキンの注文がくるんです」

   番組のアンケートで「やせたい理由」を尋ねると、1位が容姿、2位がファッション、3位が健康である。つまり、やせると健康にいいと思っている女性がかなり多いのだが、国立健康・栄養研究所の田中茂穂さんは、やせすぎが体に与える悪影響をこう心配する。

「体は極端な低カロリー状態に陥ると、カロリーの消費を抑えようとして筋肉と、代謝を促す甲状腺ホルモンを減らします。すると全体の代謝が減って食欲がなくなり、さらに筋肉が減るという負のスパイラルに陥ります。体温も落ちて内臓の働きも悪くなり、生きていくうえで危険な状態になります」

子どもにも糖尿病と心筋梗塞の悪影響が

   また、やせすぎの女性は若い時に蓄えておくべき「骨の貯金」がないため、年をとると骨が弱くなり、骨粗しょう症になりやすい。「やせ形」の高齢女性は「標準」の高齢女性より介護保険料が2倍以上になるデータも紹介された。

   問題は女性本人の健康だけには終わらないことだ。危険は次世代にも及ぶ。やせて栄養状態の悪い母親から生まれた赤ちゃんは、出生時の体重が少なくなる。日本では出生時の体重が2500グラム以下の低体重児の割合が9.6%。10人に1人で、先進国では最も多い。田中さんが低体重児の危険性をこう説明する。

「低体重児は標準体重の子より、将来、糖尿病や心筋梗塞になるリスクがはるかに高いのです。母親の胎内にいる時、栄養環境がよくないので、生き残ろうとして脂肪などの栄養分をできるだけ多く蓄えようとします。その体質がプログラムされて、生まれた後も引き継がれてしまうからです」

モデルの基準「キレイでスリム、でもガリガリでない」

   ここでヨーロッパでのやせすぎに対する規制の動きが紹介された。スペイン・マドリードのファッションショー。ショーの前にモデルたちの身長と体重が測られる。スペインでは行政の指導で9年前からBMIが18未満のやせたモデルの出場が認められなくなったからだ。ショーの主催団体の会長、クカ・ソラーナさんがこう語る。

「この規制は一般の女性たちにいい影響を与えています。キレイでスリムだけど、ガリガリではない。これが私たちの考える美しさです」

   2006年に有名モデルのアナ・カロリナさん(享年21)が拒食症で死んで以来、各国でやせすぎに対する意識改革が進んでいる。イギリスでは細すぎるマネキンが市民の抗議で撤去された。フランスでは2015年4月、やせすぎモデルの雇用禁止法が成立、違反した業者は罰金・禁固刑に課せられることになった。スペインでは政府が1万人以上の女性の体格調査を行い、平均的な女性の体格データをファッション業界に提供、服のサイズやマネキンを現実的な女性の姿に合わせるよう指導を始めている。この政策の中心になった元厚生・消費者省大臣のエレナ・サルカドさんはこう語る。

「スペイン憲法では、国民は健康を保護される権利を持つと定められています。女性がモデルやアイドルに似ようとするのではなく、自分の容姿を気に入り、健康が大切だと気づくようにするために政府が動きました」

   ここで番組のゲストが紹介された。2010年ミスユニバース日本代表でモデルの板井麻衣子さんだ。BMIは18.0である。MCの国谷裕子が板井さんに聞く。

国谷「モデルとしてスペインの動きをどう思いますか?」
板井「私自身は肯定的にとらえています。女性がやせたい理由の1つに周りの目を気にすることがあります。BMIが18という基準をファッション業界が打ち出すことで、社会全体にやせすぎに対する関心が高まるのは大歓迎です。第一線で活動しているモデルは、みんな葛藤の中でもしっかり運動をしてスリムな体を目指しています。食事制限だけで減らすのは危険です」
国谷「美とは何か、若い女性に問いかけられていますね」
板井「はい。食べちゃいけないことばかり考えずに、いま何を食べるべきか、ポジティブに食べる方向に気持ちを持っていってほしい。ミスユニバースの大会では体重を増やすことをしました。世界のミスコンテストでは健康美が一番重要ですから」
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