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母アギアティスの胎内にいたころは、平和だった。 ひとたび産婆にとりあげられたら、もう、これだ。 私は部族の長老のもとに連れてゆかれ、こともあろうに、ワインの産湯に浸けられた。 腹立たしいのと酒の香りにむせたのとで、大声で泣いてやると、顔が真っ赤になった。 「見よ、何と元気のいい子だ。肌が輝いている。これは良い兵士になるであろう!」 長老が宣言した。
どうやら最初のテストにはパスしたようだ。危ないところだった。ひきつけでも起こしていたら「不合格」となり、タユゲトス山脈の深い穴に捨てられていたことだろう。そうなると動物に食われるか、餓死するか、よくても誰かに拾われ奴隷として売り飛ばされる。 育てるか否かを判断する権利は、両親にはない。 スパルタの子どもは国の共有物。頑強な兵士に育つか、頑強な兵士を産む母となりそうな者のみが、国の一員として迎えられ、育てられるのだ。
正解は1.22~26歳です。 女性が22~23歳、男性が25~26歳と言われます。遺棄されなくても、病になれば有効な治療薬がなかった時代のこと、5歳の誕生日を迎えられた子どもは、生まれた数の半分ほどだったといわれます。 しかし10歳まで生き抜けば、戦争や病気で命を落とさないかぎり、60~70歳くらいの寿命をまっとうしたと思われます。
そのころ私の父リカスは、何をしていたか。 スパルタ市民の主な任務は、奴隷の反乱防止である。生業、つまり金もうけにかかわることは全て禁止。戦争が無ければわりあい暇だ。アゴラの体育場で運動したり、狩りに出ている。 私と過ごす時間が充分あるって? いや、父の顔はあまり見ていない。スパルタ男子は30歳まで兵舎で共同生活をする。「父親不在家庭」といっても過言ではないのだ。
私の母アギアティスは、はたちで結婚した。 他のポリスの女性は、12~13歳で30過ぎの男と結婚させられるというが、スパルタは違う。母体が充実する10代後半から20代前半が適齢期。男性は20代の結婚が奨励される。これも、頑強な兵士を産むためだ。なかなか合理的だろう。 ギリシャ婦人は家で織物をするが、スパルタでは織物を含む家事一切と、畑仕事は奴隷の役割。 だから母は専ら丈夫な兵士を産み、育てることに専念し、そしてわが家の実権を握っている。
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来週、アリストデモスは無事、7歳になる。 ほんとうに、7年間なんてあっという間だったわ。この寝顔も見納め。 いよいよこの家を去り、集団生活に入る。みんなと兵舎で眠り、学ぶことになる。 でも、これはとても大事なこと。他のポリスのどこを捜しても、こんなに徹底した教育制度はない。スパルタに生まれたのはすばらしいことだわ。 がんばって…アリストデモス。よい兵士となるために。
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