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古代ギリシャのポリスの中でも、軍事力で鳴らすスパルタ。私、アリストデモスはここで生まれた。
父は先ほどつぶやいていた市民リカス（24）、母はアギアティス（21）。
私は、どういう世界に生まれてきたのか？
ご覧のとおりギリシャは、エーゲ海を矢印のように横断してきたペルシア艦隊の脅威にさらされていた。今回はマラトンで勝利し、アテナイで撃退したが、あの帝国は侵攻をあきらめてはいない。そんなペルシア戦争の時代だ。

敵はペルシアだけではない。ポリス同士が同盟を結んだり、戦ったりで気の休まることがない。
スパルタはこの地図を東西に横断する赤いラインの南側、8,500㎢ を支配している。これは広島県とほぼ同じ、ギリシャ本土内のポリスでは最大の領有面積だ。そして海上交易を中心に発展した有力ポリスのアテナイと、時に手を結びつつ緊張のある関係が続く。彼らとはいつか戦うことになるだろう。
私たち市民が暮らすのは、赤で囲んだ領域だ。

スパルタ市域を見てみよう。４つの村がある。
スパルタ村から、6km南のアミュクライ村までがいわゆる“スパルタ銀座”。このあたりに市民のための共同食事の会場が設営される。しかし21世紀まで残るのは、アクロポリスにあるアテナ・カルキオイコスの神殿と、アルテミス・オルティアの神域の跡くらいだろう。アゴラの場所さえみつからないはずだ。スパルタは、豪華な建物を持たない主義だから。
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スパルタの人口はどのくらい？　ときかれても、統計などない。市民8000人、奴隷は10万人くらいではないか。とにかく奴隷が圧倒的に多いのだ。彼らのなかには、もともとこの川沿いの肥沃な土地に入植していた先住民もいる。10倍の数の人間に反乱を起こされたらどうなるか？　これは内なる脅威ではないか。

ギリシャ社会で、軍事力で鳴らすスパルタ。
だがその実情は、常に圧倒的な数の奴隷を、抑えるための備えだったともいえよう。
ばかげて見えるかもしれないが、我々は毎年、自分たちの奴隷に「宣戦布告」をしている。危険を感じた時、殺りくを正当化するためだ。

変わっているけれど、これが、私の故郷。私、アリストデモスはここで生まれた。戦う一員として、生まれてきた。
がんばれ自分！　がんばれアリストデモス！