発達障害や愛着障害、トラウマ障害などの人を「職場の『困った人』」と表現し、差別を助長しかねないとしてSNS上で波紋を広げている書籍について、表紙に記載されている著者の肩書が、「産業カウンセラー」から「心理カウンセラー」に変更されているとして、注目を集めている。
該当の書籍を出版する三笠書房は、「産業カウンセラー」の商標権者である日本産業カウンセラー協会から使用を禁止する旨の警告を受けたとし、「無用な紛争を避ける」ため修正したと説明した。
「産業カウンセラー」から「心理カウンセラー」へ
問題になっているのは、カウンセラーとして35年のキャリアがあるという神田裕子さんの著書「職場の『困った人』をうまく動かす心理術」(三笠書房)だ。2025年4月24日に発売を予定している。書籍の紹介ページでの説明によると、「職場の『困った人』たち」を、「ASD」「ADHD」「愛着障害」「トラウマ障害」「世代ギャップ」「疾患(自律神経失調症/うつ/更年期障害/適応障害/不安障害・パニック障害)」の6タイプに分類し、対応の仕方を紹介する内容という。
三笠書房と神田さんは18日、三笠書房の公式サイト上で声明を発表。三笠書房は書籍の概要や制作意図を説明し、SNSで寄せられた批判的な意見について「本書籍をお読みいただくことによってご理解いただけるものと信じております」と見解を示した。神田さんも「差別意識や偏見などはまったくありません」と釈明。「困った人」を動物に例えたイラストも批判を集めたが、「愛おしいもの、ピュアなものの象徴」ととらえていたと説明した。
Amazonなどの販売ページに掲載された書籍の表紙には、18日時点では、神田さんの肩書として「産業カウンセラー(発達障害・カサンドラ症候群専門)」と記載されているが、23日までに「心理カウンセラー(発達障害・カサンドラ症候群専門)」に修正されている。
これがSNSで指摘され、注目を集めた。
なお、「産業カウンセラー」は、日本産業カウンセラー協会の公式サイトによると、1992年に労働省(当時)の認定技能資格として認定された。2001年に厚生労働省が公益法人等による技能審査の認定を廃止し、現在は民間資格となっている。同協会では、実施する試験に合格し、同協会に入会することにより、「産業カウンセラー」の資格呼称を使用して活動ができると説明している。