スタートから3週間、NHK連続テレビ小説「あんぱん」の評判がいい。アンパンマンの生みの親、漫画家やなせたかし(北村匠海)さんと小松暢さん(今田美桜)夫婦をモデルにした波乱とユーモアのドラマで、父親が急死したり、母親に捨てられたりして沈んでいても、あんぱんを食べるとみんな明るく元気になるというわかりやすさが人気の秘密だ。
やなせたかし役をどう演じればいいのか
ドラマのテーマの一つは戦争と正義で、やなせさんは20代に中国戦線に送られ地獄を見る。「戦う前に腹ペコでフラフラ、タンポポの根っことか手当たり次第に喰べてました」と書き残している。それをどう演じればいいのか。北村さんは疑似体験までしたと、撮影裏話を2025年4月18日の朝のニュース番組「おはよう日本」(NHK)のインタビューで明かした。
「飢えだったり、なんか自分自身もちゃんと感じるように、食事制限だったり、3日半(食事を)抜いたり......。(すると)生きたいって体が叫んでいるのがわかるんですよね。優しい心を持ちたいのに、優しい心が持てない自分ていうのがいるということにも気づきました」
敗戦を通して知った「正義は逆転する」
そして、やなせさんが戦争と敗戦を通して知ったのは、絶対と言われていた正義は逆転するということだった。しかし、逆転しない正義があるとすれば、どういうものなのか。「そこに飢えた人がいれば、その人に一切れのパンをあげるということは、A国に行こうが、B国へ行こうが正しいんです」と語っていた。そこから生まれたのが、飢えた人がいたら自分のほっぺたをちぎって与えるアンパンマンが生まれた。
北村さんは「すごく同意というか、同感します。だれかにも、自分にも優しく生きてほしい」「何が正義なのか、生きるとはどういうことか。すごく大きなテーマで(「あんぱん」を)とらえてほしい」と語った。3日半絶食して臨んだシーンは6月頃に放送されるようだ。
(シニアエディター 関口一喜)