ASD(自閉症スペクトラム)やADHD(注意欠如・多動症)の人などを職場の「困った人」などと表現した産業カウンセラーの新刊著書について、差別を助長するのではないかと、ネット上で批判が噴出している。
こういった人々を動物に例えたイラストにも批判が出て、描いたイラストレーターが「真摯に受け止めております」などとnoteへの投稿で謝罪する事態になっている。
発達障害の1つを「こだわり強めの過集中さん」
この著書は、「職場の『困った人』をうまく動かす心理術」(三笠書房)。著者は、発達障害などの相談で35年のキャリアがあるという神田裕子氏で、2025年4月12日に著書の見本が届いたとXで写真を投稿して、24日に発売すると告知した。価格は1980円(税込)で、すでにアマゾンで予約を受け付けている。
アマゾンなどでの著書紹介によると、職場の「困った人」をどう扱うかノウハウを伝授するのが著書の目的で、6タイプに分けて対応をマニュアル化している。発達障害の1つとされる自閉スペクトラム症(ASD)のタイプについては、「こだわり強めの過集中さん」と紹介し、「すぐにキレる!」「気まずくなると急にいなくなる」などとした。愛着障害は「愛情不足のかまってさん」、うつ病などの疾患は「頑張りすぎて心が疲れたおやすみさん」などと表現している。それぞれのタイプについて、動物に例えたイラストが描かれていた。
広告では、「なぜ、いつも私があの人の尻拭いをさせられるのか?」と被害意識を煽るともとれる表現を交えながら、「『戦わずして勝つ』ためのテクニックが満載!」などとPRしている。
この著書内容が15日ごろにXで拡散され、専門家からも疑問や批判が寄せられた。
ネット上では、「社会生活に生きづらさを抱えている人々に対し、失礼では」「動物化しちゃったのはちょっとやりすぎ」「差別の助長だと思う」などと意見が相次いだ。「『困った人』じゃなくて『困っている人』でしょ」「出版社の人は誰も止めなかったの?」との指摘も出た。
一方で、「迷惑かけてたりするんだろうから、相手の大変さはわかる」「管理職からの共感を集めると出版のプロが判断した」といった意見も一部であった。