「備蓄米でもうけた」と批判されたくない
全農は今回の備蓄米の取り扱いに神経を使う。
マスコミを集めて記者会見を開き、備蓄米について「落札金額に運賃・保管料・金利・事務経費など必要経費のみを加え、適正に取り扱う」との方針を発表した。備蓄米で利潤を上げることをしないという宣言だ。政府に協力して少しでも安く供給するという考え方だが、国民から「備蓄米でもうけている」と批判されないように襟を正す狙いもあるようだ。
今回の放出では、政府も異例の対応を余儀なくされた。 備蓄米は不作で食料危機のときに備えたものだが、23年も24年もコメの作況は平年並みで、農水省は「不作ではない」との立場をとってきた。このため24年の段階では、放出をかたくなに拒否してきた事情がある。
しかし、あまりにも急な値上がりで、「米の円滑な流通の確保を図るため」という特例をわざわざ作って放出を決めた。後手に回った感は否めず、江藤拓農水大臣は25年2月17日の衆院予算委員会でこう言った。「判断がおそかったということも含めあらゆる批判を受け止めたい」
(経済ジャーナリスト 加藤裕則)