大阪・関西万博は、安全上の懸念を理由に開催中止の主張がくすぶる中で、2025年4月13日に開幕を迎える。開幕まで1週間を切った4月6日には、会場内にある電気設備の「地下ピット」で、着火すれば爆発する恐れがある濃度のメタンガスが検知されている。
これは共産党市議が通報したことで発覚した。その2日後の報道公開では、現場周辺のマンホールのふたは換気のために開けられ、囲いが設置されていた。だが、この報道公開の様子は、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」で報じられることはなかった。赤旗が日本国際博覧会協会(万博協会)から取材を断られたからだ。
共産党は万博中止を要求する立場で、一連の経緯を「批判的報道を締め出す狙い」が見える、などと問題視。事態は国会審議に飛び火している。
「テストラン」で検知器持参した共産党市議が通報
万博会場は埋め立て地で、一部の区域では廃棄物などの埋め立てが原因でメタンガスが発生している。24年3月には、会場西側のグリーンワールド(GW)工区のトイレの工事現場で、メタンガスによる爆発事故が起きている。
25年4月4~6日の3日間にわたって行われた「テストラン」では、抽選で選ばれた大阪府民や関係者など約10万人が参加。その中に、共産党の寺本健太・守口市議もいた。寺本氏が、持参した検知器を3月に事故が起きたエリアのマンホールに差し入れたところ、空気と混ざり着火すれば爆発する危険性がある最低濃度(5vol%)を超えるメタンガスを検知したとして、消防に通報した。
2消防も、地下ピットで最低濃度を超えるメタンガスを検知。立ち入りを規制し、地下ピットのふたを開けて換気した。
4月9日の報道公開の際には、地下ピットのふたとみられるマンホールのふたは、角材がはさまれて開いた状態。マンホールの周辺は柵で囲われ、「立入禁止」の黄色いテープが巻き付けられていた。大屋根リングからは距離があるが、西ゲートは至近。近くにはキッチンカーも停車していた。
赤旗は、「テストラン」だけでなく、J-CASTニュース含む多くの媒体が取材できた9日の報道公開も取材を断られている。記者アカウントが明らかにしていたほか、10日付の赤旗記事でも
「『赤旗』は、愛知万博でも万博協会から記者証が発行され、政府官庁・自治体でも他メディアと差別なき対応を受けており、今回の取材拒否は異常です」
などと事実関係を説明した上で、万博協会の対応を非難。「批判的報道を締め出す狙いが見えます」とも指摘した。
「一般来場者として会場内に入り取材活動することを妨げるものではない」が...
この問題は、国会審議でも取り上げられた。
共産党の辰巳孝太郎衆院議員が11日の衆院経済産業委員会で一連の経緯を問題視。武藤容治経済産業相が答弁した。武藤氏は、万博協会が定める「メディアガイドライン」では、会場内の禁止事項として「特定の政治、思想、宗教等の活動目的に利用されるおそれがある事項」を掲げていることから、政党機関紙にはメディア関係者用の入場証を発行しない方針だと説明した。ただ、
「一般来場者として会場内に入り取材活動することを妨げるものではない」
とも指摘した。
辰巳氏は、赤旗記者は経済産業省や内閣府の記者会見でも取材できるなどとして反発。対応の見直しを求めた。
武藤氏は、現時点のガイドライン改訂の必要性を否定する一方で、
「他のイベント等の事例については、事務方にちょっと確認させていただきたい」
とも話した。
(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)