すべての「団塊の世代」が2025年に75歳以上に達し、人生100年時代の本格到来を迎えた。当時としては長命の75歳まで生きた家康は遺訓に「不自由を常と思えば不足なし」を残したが、年を重ねると、身体能力の衰えと認知機能の低下によって、身の回りの不自由、困りごとが増えてくるのは避けられない。地域に住む高齢者の困りごとを把握し、そのニーズに応じた適切な支援は、暮らしやすい街づくりを進める各自治体にとっても重要なテーマだ。
生活必需品の確保のうえでも欠かせない
高齢者が自立した生活を送るうえでの最大の課題は、移動手段の確保――。ニッセイ基礎研究所は2022年に発表したリポート「一般高齢者の日常生活における困りごと・ニーズランキング」で、そう結論付けた。ランキングは全国の自治体が実施する高齢者対象の「介護予防・日常生活圏域ニーズ調査」と、要介護認定者対象の「在宅介護実態調査」を用いて独自に点数化して集計した。
ランキングによると、上位5位は(1)送迎、公共交通の充実178点(2)買い物、移動販売、薬の受け取り133点(3)家の改修・修繕、模様替え、その費用補助92点(4)話し相手、友人関係、通いの場など交流の場の充実86点(5)調理69点――だった。
外出する高齢者にとって1位の「送迎、公共交通の充実」は、不可欠である。車を運転する高齢者が免許を返納すると、買い物や通院の移動手段を失う可能性がある。電車やバスといった公共交通機関が少ない地域であれば、深刻度は一気に増す。2位に入った「買い物、移動販売、薬の受け取り」は、食料品や日用品、医薬品など生活必需品の確保を意味するが、これも「移動手段の確保」を抜きには語れない。3位以下との点差が大きいため、リポートは「高齢者の日々の暮らしにとって、移動手段が最も深刻な困難や不安材料となっている」と分析している。
「住まい」に関する3位「家の改修・修繕、模様替え、その費用補助」は、身体能力の衰えによって、自宅のリフォームの必要性が増していることを示す。4位の「話し相手、友人関係、通いの場など交流の場の充実」は一人暮らしや、家に引きこもりがちになって、社会や地域との交流不足を実感している人が多いのが分かる。5位に「調理」が入ったほか、「配食、弁当配達」が8位にランクインした。日々の食事の準備が重い負担になっている現実がうかがえる。
心配事は自分の健康、配偶者の健康
今の暮らしに不自由はないが、この先を考えると......。日本総合研究所が2024年2月に65歳以上の1600人を対象にインターネットで実施した意識調査で、「今後の生活での不安」を尋ねたところ、(1)自分の健康73.8%(2)配偶者の健康45.1%(3)生活費26.3%(4)家の老朽化や修理、建て替え19.6%(5)介護の費用16.8%――だった。大別すると、「健康(配偶者を含む)」「生活費などの経済事情」「住居」が不安材料といえるだろう。
つまるところ、高齢者にとって暮らしやすいとは交通の便が良く、医療機関や介護施設が身近にある環境だ。加えて、家の補修や食事など、各種の支援サービスがあり、かつ地域とつながりを保てることが欠かせない。
諸々の困りごとの受け皿が、各地で活動している「地域包括支援センター」だ。設置数は2024年4月現在、全国に5451か所(厚生労働省調べ)。市町村直営のほか、多くが自治体から受託した社会福祉法人や医療法人、企業などが運営している。「総合相談窓口」を設け、保健師や社会福祉士らのスタッフがNPO(非営利組織)や、ボランティア、地域住民などと連携しながら、高齢者に必要な支援をしている。
困りごとがあれば、まずは近くの地域包括支援センターを訪ね、相談するのがよい。
(フリーライター 倉井建太)