2024年の備蓄米を政府に納入しなかったケースがあったとして、農林水産省が全国7業者の名前を公式サイトで発表し、買い受ける資格を3か月停止する措置にすることを明らかにした。
コメの高値が続いているとして、政府は備蓄米を放出しており、その中には24年産も含まれている。納入しないとどんな影響があるのか、農水省の担当課に聞いた。
「転売があったかについては、承知していません」
7業者への措置については、2025年3月26日に、農水省の「指名停止等措置に関する情報」のページに掲載された。
このページの内容と同省の貿易業務課がJ-CASTニュースの取材に答えたところによると、青森や秋田、福島、徳島の各業者は、契約書に定められた数量のコメを最終期限の3月11日までに政府に引き渡さず、契約不履行になった。そして、契約書の規定に基づいて、26日付で備蓄米を買い受ける資格を3か月停止する措置にすることを明らかにした。
業者に対しては、契約金の3割に当たる違約金を科すとしている。
この件については、北海道新聞が28日、違約金を支払っても高値で転売した方がいいと考えたことを取材に明かした業者もいたとして、ウェブ版のニュースで報じた。記事では、「米価高騰を背景にルール違反が起きた」として、「政府の在庫量が予定より少なくなることで、今後の備蓄米放出にも影響しかねない」と指摘している。その後、各メディアも、7業者が資格停止になり、転売した業者もいたなどと次々に報じた。
7業者が米を納入しなかった理由については、農水省の貿易業務課では、次のように答えた。
「手を尽くしてもらいましたが、数量分を履行できなかったということです。個々の事情になりますので、理由についてはお答えしかねます。転売があったかについては、承知していません」
備蓄米の放出については、納入しない業者が出たことで何か影響があったのだろうか。
「必要量は確保してあり、放出への影響はなかった」
この点について、農水省の貿易業務課は、コメの23、24年産を放出し、1回目はそれぞれ5万、10万トンだったとしたうえで、「必要量は確保してありますので、7業者からの未納入による備蓄米放出への影響はなかったと考えています」と答えた。
資格停止を受けた業者の1つ、町田アンド町田商会(青森県弘前市)は3月31日、公式サイトに「国内産米穀の買入契約に係る売渡申込資格停止措置について」と題するお知らせを出した。
そこでは、コメの「入札価格と一般市場卸価格に大きな乖離」が生じたため、納入予定だった農家から「売り渡しできない」と申し入れがあったとし、結果として政府に引き渡しできなかったと説明した。そして、備蓄米の放出について落札し、市場に出していない、と誤解する向きもあるとして、「当社は今般の政府備蓄米放出に際し、入札申込み並びに落札した事実はございません」と述べた。ただ、資格停止措置を受けたことについては、「お客様をはじめ、お取引様ならびに関係者の皆様に混乱とご心配を招いていることにお詫び申し上げます」と謝罪した。
コメの高騰については、農水省は31日、農協などの集荷業者を通さず、農家から卸売業者などに直接販売されたコメが増えたと調査結果を発表しており、これが流通の目詰まりを起こした原因だとも報じられている。
今回は、放出された備蓄米が転売されたわけではないが、コメが高騰しているため、通常ルートを通さずに他の業者が農家から買い取っている実態の一端が浮き彫りになった。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)