ウェブメディアの強制捜査から情報源を逮捕
こうした異常事態を早い時点から追い続けていたのが、九州を拠点とするウェブメディア「HUNTER」だった。
2023年10月にフリージャーナリストの小笠原淳氏が2回にわたって「鹿児島県警の闇」という記事を掲載したのを契機に、捜査書類の廃棄を促すかのような、県警内部向けの文書が掲載された。この情報提供をしたのは曽於署の巡査長だった。
また、2024年3月に退職したばかりの県警前生活安全部長が、小笠原氏に向け「闇をあばいてください」から始まる文書を匿名で送付した。そこには前出の枕崎署員による盗撮事件、および霧島署員の巡回簿悪用のストーカー事案に対する組織的隠蔽などについて記載されていた。小笠原氏はこの文書をメールで「HUNTER」運営者の中願寺純則氏へ送信する。
同年4月、曽於署巡査長が地方公務員法違反容疑で鹿児島県警に逮捕された。すると同日「HUNTER」の事務所に県警の捜査員が家宅捜索に入り、パソコンや携帯電話などを押収。このなかに入っていた文書から身柄を割り出された前生活安全部長が、翌月に逮捕されたのである。
これら一連の事件は、民主主義を揺るがす問題だ。まずは警察官への信頼を揺るがす行為が、短期間に頻発していること。そして、もうひとつは憲法で保障されている「報道の自由」の侵害だ。
県警は強制捜査で情報源を突き止めた。これについて、報道機関が事実をつまびらかにするため、情報源を萎縮させることなく情報提供を行ってもらう「取材源の秘匿」を蹂躙する行為ではないか、という批判が噴出している。
権力の暴走ともとられかねない一連の行為について、県警側は適正な捜査であったことを主張している。