出版社の3割が経営赤字といわれる中で、漫画の売れ行きが好調だ。2024年のコミックの推定販売額は7043億円と初めて7000億円を超え、この5年間で2.7倍の急成長となった。集英社、講談社、KADOKAWA、小学館など漫画部門が充実している出版社はいずれも業績好調、文系学生の就職希望企業ランキングでも上位10社に並んでいる。
男性の人気は「キングダム」女性では「薬屋のひとりごと」
とはいえ、好調なのは電子漫画で、印刷の漫画雑誌は休廃刊が相次ぎ、単行本の売り上げも横ばい。いまや漫画市場の7割が電子版になった。
どんな漫画が読まれているのか。電子書店「ebookjapan」の2024年ランキングによると、男性漫画では「キングダム」「呪術廻戦」「葬送のフリーレン」、女性漫画は「薬屋のひとりごと」「外科医エリーゼ」「どうせ捨てられるのなら、最後に好きにさせていただきます」が人気上位だ。こうした作品が配信サイトの「無料」や「読み放題」サービスに乗って、漫画市場を拡大しているのである。出版社の経営幹部はこう話す。
「かつての漫画ビジネスは、有望な新人を発掘して、住むアパートを借りてやったり、お小遣いをあげたりして育てて雑誌にデビューさせ、単行本で儲けるというものでした。ヒットしたらものすごい売り上げとなり、漫画家は億万長者ですよ。ただ、当たるのは何作かで、外れも多い。しかし、電子版なら印刷や製本、在庫管理などの負担は少なく、売れ残りの返本もない。紙に比べて出版コストは低く、外れても損失は小さいので、次々とデビューさせて、ヒットしなければすぐやめることができます」
漫画家は「雑誌は無くなってほしくない」
では、漫画雑誌はなくなってしまうのか。実は漫画家も雑誌は残ってほしいのだという。何よりも有名雑誌に連載を持てば箔が付き、「先生」と呼ばれるようになって電子漫画の契約も有利になる。いまはまだ雑誌で人気となった漫画を電子版で読むというのが主流だが、今後は電子版で人気となった漫画家が雑誌でグレードアップして、さらに電子版でヒットを飛ばすという仕組みになるのだろうか。
オリコンのアンケート調査では、漫画を「紙」で読む人は14.9%、「どちらかといえば紙」は44.3%で、「電子」は11%、「どちらかといえば電子」が29.8%だった。まだ紙派が6割だが、まもなく逆転しそうだ。
(シニアエディター 関口一喜)