ミドル世代の転職が活発化 年収アップは男性40代、女性50代が最高...叶えたいキャリアを得るには/マイナビ・嘉嶋麻友美さん

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   転職には「35歳限界説」という年齢の壁があるとされているが......。

   40~50代の転職が、20~30代より活発化していることが、就職情報サイトのマイナビ(東京都千代田区)が2025年3月12日に発表した「マイナビ 転職動向調査2025年版」でわかった。

   しかも、同じミドル世代でも男女によって真逆の転職の道を歩んでいる。

   どうすれば年収アップと叶えたいキャリアを得られるか。マイナビの嘉嶋麻友美さんに話を聞いた。

  • 女性管理職の転職が活発に(写真はイメージ)
    女性管理職の転職が活発に(写真はイメージ)
  • (図表1)正社員の転職率の推移(性別年代別)(マイナビ作成)
    (図表1)正社員の転職率の推移(性別年代別)(マイナビ作成)
  • (図表2)転職前後での年収額(性別年代別)(マイナビ作成)
    (図表2)転職前後での年収額(性別年代別)(マイナビ作成)
  • 嘉嶋麻友美さん(本人提供)
    嘉嶋麻友美さん(本人提供)
  • 女性管理職の転職が活発に(写真はイメージ)
  • (図表1)正社員の転職率の推移(性別年代別)(マイナビ作成)
  • (図表2)転職前後での年収額(性別年代別)(マイナビ作成)
  • 嘉嶋麻友美さん(本人提供)

転職後年収、50代では男性ダウン、女性がアップと正反対

   マイナビの調査(2024年12月16日~19日)は、正社員として働いている20~50代のうち、2024年に転職した1500人が対象。全体の転職率は7.2%だった。

   興味深いのは、性別年代別にみると、依然として20~30代の転職率が高いが、前年(2023年)比では男女ともに減少していること。その一方で、40~50代では男女ともに増加しているのだ(50代男性のみ同率)。40~50代の転職活動が活発化していることがわかる【図表1】。

   転職後に年収が上がった割合は全体で39.4%。特に30~40代男性がプラス30万円台と高い。しかし、50代男性は2万円程度ダウンしている。また、転職後の平均年収は509.3万円で、平均転職アップ額は22.0万円となった。50代男性を除くすべての年代の男女が増加している。女性では30代と50代のアップ額が15万円程度と高いことが目立つ【図表2】。

40~50代の転職率アップの背景に、企業と個人の事情

   J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をまとめたマイナビ研究員の嘉嶋麻友美さんに話を聞いた。

――転職率の前年比が20~30代では男女とも下がっているのに、逆に40~50代では上がっているのはどういう理由からでしょうか。

嘉嶋麻友美さん 40~50代の転職率増加には、企業と個人両方での変化が関係しています。まず企業では、少子高齢化の影響を受け、若手の採用が難しくなっています。また、定年延長などの動きから生涯就業期間が延び、40~50代でも長期就労期間を確保できるようになりました。さらに、年功序列などの日本型雇用が変化しつつあり、個人のスキルや経験をもとに転職者の受け入れがしやすくなりました。

そういった市場変化や雇用風土の変化により、40~50代はスキルや経験が豊富な人材として企業ニーズが高まっています。

個人の面からは、40~50代の転職理由を他世代と比較すると、「仕事内容に不満があった」や「職場の人間関係が悪かった」が高いです。自由回答では、40代男性で「上司の定年退職がきっかけとなった」という意見もみられ、周りの人の退職も転職のトリガーとなるケースがあります。

働ける期間が長期化するなか、より理想とする職場をあきらめるのではなく、模索する動きが活発化していると考えられます。

50代男性が年収ダウンしてまで得たい「大切なモノ」

――しかし、転職前後の年収額を見ると、男性では40代がずば抜けて増加額が多いですが、50代では下がってしまいます。これはどういうわけですか。

嘉嶋麻友美さん 50代男性の転職後の年収が減少する理由としては、管理職から非管理職へ転職する割合が高いことが関係しています。下の年代では一桁台なのに対し、50代男性では2割近くが管理職から非管理職になります。

では年収ではなく、どういった要素を重視して転職しているかですが、50代男性の転職後の変化をみると「1日あたりの労働時間が減った」「休日・休暇が増えた」という割合が高く、体力面なども考慮して転職していると考えられます。

50代女性は「組織チェンジ」、40代女性は「フルチェンジ」の転職

――興味深いのは、女性では転職後の年収アップの割合が、50代が30代とともにずば抜けて高いことですね。その一方で、40代が最も低いです。これは男性の40代(最も年収アップが高い)と真逆の結果です。これらはそれぞれどういう理由でしょうか。

嘉嶋麻友美さん 50代女性の年収アップが高い背景には、女性管理職の転職が活発化していることがあるようです。実際、50代女性で管理職のままで転職する割合は女性の他年代よりも高く、転職後に管理職でいる割合も高い結果でした。これは男性50代と対照的です。

背景には、50代女性が前職と同業種・同職種に転職する「組織チェンジ」の転職割合が約7割と高いことが考えられます。今まで磨いてきたスキルをそのまま活かせる職場に転職しているため、即戦力として採用されているのではないでしょうか。

これに対して40代女性では「組織チェンジ」の割合が5割弱と低く、業種ないし職種、もしくは両方を変える「フルチェンジ」の転職を行なう割合が高いです。転職先を決めた理由でも「新しいキャリア・スキルを身につけることができる」が決め手となるケースが上位に上がります。

私生活が一段落するタイミングで、ワークスタイルにも余裕ができ、転職が新しいことへ取り組むターニングポイントとなっているのではないでしょうか。

年齢の壁「35歳転職限界説」を気にせず、チャレンジし続けよう

――なるほど。大いに納得です。同じミドル世代でも40~50代の男女はそれぞれに目指す道が違うようですね。研究者として転職を目指すミドル世代にアドバイスとエールをお願いします。

嘉嶋麻友美さん 40~50代の転職率は上昇しています。また、働きたい年齢の上限も年々上昇傾向にあります。従来いわれ続けていた年齢の壁「35歳転職限界説」が解消されつつあります。かなえたいライフキャリアもワークキャリアも、以前よりもかなえやすくなっています。

しかし、転職市場での可能性がさらに広がる一方で、企業側では経験者ニーズが高い状態にあることにも留意していただきたいです。

そのため、同業種・同職種への転職を行い、今のスキルをより蓄積していくにしても、新しい業種や職種にチャレンジし新しいキャリアやスキルを身につけていくにしても、どちらにしてもこれまでにつちかったスキルや経験は若手にはない強みの一つとして、丁寧にキャリアの棚卸しを行なうことが大切です。

自身のさらなるスキルアップを目指して学び続けていくことで、転職市場での価値をより高めて、理想のキャリアをかなえていただきたいです。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)



【プロフィール】
嘉嶋 麻友美(かしま・まゆみ)
マイナビキャリアリサーチラボ研究員

2018年株式会社マイナビ入社。転職情報メディアの営業として、北陸・近畿エリアで350社以上の企業の中途採用のサポートを行なう。その後現職に。主に中途・非正規雇用に関する調査を担当。女性のキャリア形成や人的資本管理に関心が高い。

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