「いらだつという感情」には「一部共感できる部分もある」が...
もっとも、一般の人には、依拠している理論なんてどうでもよく、しばしば財務省解体デモについての筆者は感想を求められる。思えば、筆者は、財務省役人であったときから、財務省は政府の財政状況を正しく国民に示していないという批判を30年以上続けている。かいつまんでいうと、政府の財務状況は、政府の連結対象を含む統合政府バランスシートの資産と負債の状況から正しく分析できる。統合政府の負債から資産を控除したネット負債が重要だ。その動きを見るために、統合政府のプライマリーバランスをみるのはいいが、今の政府のプライマリーバランスは、連結対象が抜けた政府単体であるし、関係のない地方政府を含んでおり正しい分析ツールになっていない。
筆者としては、感情より学者としての正しい分析ツールを前提とすべきという考えであるので、誤った分析の財務省解体デモには与しない。
デモはどのような考え方であっても、参加は自由であるが、冒頭に述べたような13京円の隠れ資産やMMTを言う限り、それから出てくる主張は国民には有益ではないと思う。というわけで、今のところ、財務省キャリアが役人の分を超えて政治家のようにふるまい、正しい財政状況を知らせないで、いらだつという感情を持つ点において、財務省解体デモには一部共感できる部分もあるが、その主張には賛成しかねる点もある。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。