「財務省が13京円を隠している」という話が、財務省解体デモに参加していた元首相の元秘書から出た。さすがにこれはデマだ。かつて埋蔵金男と言われ、40兆円程度を国民に晒した筆者は、実は政府のバランスシートを最初に作ったのだが、13京円はどこを探しても出てこない。13京円というと、2025年度税収78兆円の1700年分にもなる。
ここまで酷くないが、デモに参加している人の中には、MMT(近代貨幣理論)に依拠して、「財政赤字なんて気にする必要はない」という話をする人もいる。
MMT論者は「数値で話すことができない思想者」
筆者は、従来の経済理論や会計、ファイナンス論を使って数量的にマクロ経済政策を説明するが、政府与党幹部から、しばしば「高橋さんは、MMT論者ですか」と聞かれる。そのたびに「私はMMT批判論者です。MMT論者は、数値で話すことができない思想者ですよ。例えば1000兆円の財政支出をしても問題ない、とも言う。しかも、MMTは、クルーグマン先生(経済学者のポール・クルーグマン氏)などアメリカ経済学会のノーベル賞受賞などからはまったく相手にされていない、政治的なプロパガンダです。もし私がMMTを賛成したら、恩師であるバーナンキ先生(FRB(連邦準備制度理事会)の議長を務めたベン・バーナンキ氏)に叱られてしまいます」と説明している。
筆者は、安倍元首相のコロナ対策100兆円で「政府と日銀連合軍」の技術的アドバイスを行ったことでもわかるように、数量的かつ従来基本理論で話している。なお、MMTについて、筆者と田中秀臣氏は『日本経済再起動』の中で理論的批判を行っているので、是非参照していただきたい。
というわけで、筆者は財務省解体デモの人とは一線を画しているつもりだ。