「社内のキーマン」が退職し、会社経営そのものが行き詰まる
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した帝国データバンク情報統括部の飯島大介さんに話を聞いた。
――初歩的な疑問で恐縮ですが、従業員退職型倒産を「従業員や経営幹部の退職に起因する倒産」とありますが、普通の人手不足倒産や、よくある後継者難倒産とはどこが違うのでしょうか。
飯島大介さん 通常の人手不足倒産とは異なり、「社内のキーマン」が退職したことで会社経営そのものが行き詰った事例になります。営業全般をつかさどっていた人物や、技術面・スキキル面でほかの人間に代替ができない人物の退職などを指しています。
たとえば、建設業でいえば、一級建築士とか一級施工管理技士といった国家資格を持つ人間がいないと、工事そのものができなくなります。自動車整備業でも一級整備士の資格をもつ従業員に辞められたり、IT業界のソフトウェア開発業でも多くの資格を持つ優秀なシステムエンジニアに辞められたりすると、仕事の受注が難しくなります。
――なるほど、そういうキーパーソンがいなくなると、普通の従業員に退職されるより厳しいですね。サービス業が5年ぶりに最多となったとありますが、ズバリその理由は何でしょうか。
飯島大介さん 「現状の待遇に不満を抱えていた」ケースが多かったとみられます。賃上げ要求や労働環境の改善といった要望が経営陣と折り合わないなかで、独立をしたり、あるいは他社からの引き抜きで職を辞したりするケースが多いと聞かれます。
サービス業では、スキルさえあれば比較的「独立がしやすい」ことも、退職型倒産が増えた要因ではないかと思います。たとえば、IT業界では優秀なシステムエンジニアは高待遇で求められているし、1人でも独立できます。
美容業界も同様です。スキルの高い美容師や固定客の多い美容師ほど、より良い待遇を得るために独立して自分の店を持ちたいという独立志向が高く、店側からすれば売り上げの見込める美容師に辞められると経営がピンチに陥ります。