米大リーグ、ロサンゼルス・ドジャース大谷翔平選手(30)の口座から不正送金をした罪に問われた、元専属通訳・水原一平被告(40)。禁錮4年9か月、賠償金約1700万ドル(約26億円)の支払いを言い渡されており、まもなく刑務所に収監される。
だが、水原被告を待ち受ける米国の刑務所は、環境悪化が懸念されている。
施設の老朽化・衛生問題の悪化が懸念される刑務所へ
水原被告は、現地時間の2025年3月24日までに米国連邦政府刑務局へ出頭して、そののちに収監される刑務所が決まる予定。出頭期限は延期されたもようだが、収監先と目されるのが、カリフォルニア州にあるターミナル・アイランド連邦矯正施設だ。
理由として、水原被告の弁護側が南カリフォルニアでの収監を希望していると報じられていることが挙げられる。この施設は水原被告が住むロサンゼルスのサンペドロ地区にあり、近年は詐欺や金融犯罪などの非暴力犯罪の受刑者が多く収監されているからだ。
ただ、この連邦刑務所は2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の際には、収容定員が約1000人とされる施設のなかで受刑者・職員含め600人以上が感染、4人の死者を出したと報じられた施設でもある。
この施設は1938年に開設されており、施設の老朽化および衛生問題の悪化が懸念されているが、こうした問題は、全米的に広がっている。
連邦司法省の監察総監室が2023年までに調査を行ったところ、全123の連邦刑務所のうち、半数以上が築30年を超え、激しい劣化が見られる施設も複数発見。それらの修繕には約20億ドルが必要になるとされている。迅速な環境改善が行われるかは、不透明な状況だ。
受刑者が生きたまま南京虫にかじられ死亡
そもそも米国は、他の国に比べて刑務所への収監者が著しく多い。1960年代以降、米国では犯罪率が増加し、80年代のレーガン政権以降、その抑止のために刑の長期化や収監強化、極刑適用を拡大するなどの「厳罰主義」が広まった。
こうしたことから、刑務所の運営を民間企業に委託するケースも増えたが、企業ゆえにコスト削減が優先され、所内の環境悪化が横行。バイデン前大統領は民間企業との契約を段階的に停止することを発表した。
だが、この所内状況の悪化は、民間刑務所に限った問題ではない。昨年から今年にかけてのレポートによれば、ジョージア州アトランタのフルトン郡刑務所では、1年で1000件以上の暴行事件(うち314件の刺傷事件)の発生が判明。加えて、受刑者が生きたまま南京虫にかじられて死に至ったという事例も報道されている。
さらには、サウスカロライナ州のアルビン・S・グレン刑務所で収容者間の暴行・性的暴行が頻発していることもわかった。人員不足で監視不十分となったことが理由で、壁を破って他の収容者を襲撃するという施設の老朽化に起因するケースも報告されている。
刑務所にも潜む「ギャンブル」
こうした環境悪化が懸念される米国の刑務所に入る水原被告。実は彼にとっていちばんの懸念事項は、やはり「ギャンブル」かもしれない。
かつて覚醒剤密売の容疑によって米刑務所に収監された経験を持つ日本人・KEI氏は、著書『アメリカ極悪刑務所を生き抜いた日本人 改訂版』(東京キララ社)で、刑務所内には破滅への落とし穴が潜んでいることに触れ、その最たるものが「ギャンブル」だとして、所内のギャンブルで負けが込んだ収容者が破滅していくさまが赤裸々に記されている。
そもそも水原被告は「ギャンブル依存症」を理由に情状酌量を求めていたが、裁判所は依存症を認めずに、今回の判決が下っているだけに、心配な情報である。
ただ、水原被告の収監先と目されるターミナル・アイランド連邦矯正施設は、社会復帰のための教育プログラムが充実しているという。KEI氏の収容された刑務所に比べて、犯罪の種類・受刑者の危険度で分けられるセキュリティーレベルも、ずっと低い。
模範囚となれば、4年9か月の刑期も短くなるとされるが、果たして──。