どんな会議でも、議事録を作るのは非常に大変だ。
したがって、どこの国でも「速記者」と呼ばれる職業が確立している。が、その速記や議事録作成の分野にもAIが進出し、人間に取って代わろうとしている。
Googleのビデオ会議ツール『Google Meet』にはAIが会議の文字記録を作成する「自動メモ生成」機能というものがあるが、それが2025年3月から日本語にも対応するようになった。
これは日本のビジネスパーソンたちにとっても非常に大きなニュースではないか。
リアルタイムで議事録作成、その概要文も作成可能
Google Meetの自動メモ生成機能は、日本語では「メモ」と名前がついているが、実質的には議事録作成機能である。
会議というものは、当然ながら複数人で行うものだ。
よくあるのは、単純なボイスメモの文字起こし。これでは、発言者毎の区別がなく、出席者全員の発言が同じ段落に書かれている......ということも。
しかし、Google Meetの自動メモ生成機能なら、きちんと発言者の区別をしてくれる。また、会議の概要文の作成や、その概要文の中に書かれているポイントが収録動画内の何分何秒に議論されたのかというリンクも自動的に作成する。
こうして作られた議事録は、メールやGoogleカレンダーで出席者全員に共有される仕組みだ。さらに、会議に遅れて参加した人に「この時点までの概要」を提出することも可能である。
これはもはや、人間がやるより優秀なのでは......!?
ただし、有料プラン会員限定機能
この新機能は、GoogleのAIプラットフォーム『Gemini』と連携したものだ。
ただし、残念ながら自動メモ生成機能の利用は無料ではない。
Google Meetヘルプには「対象となるGoogle Workspaceサブスクリプションが必要です」と説明されているが、その1つであるGoogle WorkspaceのBusiness Standardプランのサブスク料は、日本では月1600円。
物価高のこの時代、個人でGoogle Meetの議事録作成機能を使うのは金銭的な負担が伴ってしまうようだ。
もっとも、このあたりはGoogle Meetの会議主催者が有料プランに加入していればいい話でもある。
日本語の方言を正確に認識できる日も来るか?
現状、日本語向けの自動メモ生成機能は始まったばかりで、まだ精度の面で甘い部分もあるかもしれない。
Geminiに限らず、AIは「日本各地域の方言を正確に認識できない」ということが指摘されている。「火、日」「橋、端」なども地域によって発音が異なり、人名もたとえば筆者の苗字「澤田」は富士川の東西で違う発音になってしまう。
このあたりでAIが誤記してしまうことが、多々あるのだ。地方議会で速記者を廃止できない理由でもある。
そのうえ、Google Meetの字幕表示機能も、今の時点ではお世辞にも正確とは言えない。句点と読点を間違える、妙なところに「?」をつける、漢字を間違える......といったことが頻発する。
だが、AIは日々学習するものでもある。
AIプラットフォームやそれを活用するサービスは、登場当初は不完全なのはむしろ当然だ。数か月後にはまったくの別物のように化けることはよくある。そして、その成長に世界各国のテクノロジーメディアが驚愕する......というのが毎度のパターンである。
だから、「各地の方言を標準語に直した上で議事録を作る」という機能が確立されるのもそう遠くないのかもしれない?(澤田真一)