2025年春の「歓送迎会」や「花見」の計画を立てている人も多いだろう。
リクルートの外食市場に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」が2025年3月17日に発表した「『歓送迎会』&『花見』動向を調査」によると、コロナ禍から回復しており、20~30代の若手を中心に盛り上がりをみせそうだという。
20代のZ世代といえば、飲み会が嫌いではなかったのか。調査担当者に聞いた。
歓送迎会への参加意欲は、20代の男女が高い
ホットペッパーグルメ外食総研の調査(2025年1月31日~2月14日)は今回で13回目。全国の20~69歳の男女7265人が対象だ。2025年春の「歓送迎会」と「花見」について、「昨年より大きく増えそう」「昨年よりやや増えそう」「昨年と変わらない」「昨年よりやや減りそう」「昨年より大きく減りそう」の5段階で聞いた。
その結果、2025年春の歓送迎会への参加見込みは「変わらない」が88.4%で、増加派(「昨年より大きく増えそう」+「昨年よりやや増えそう」=9.5%)が減少派(「昨年より大きく減りそう」+「昨年よりやや減りそう」=2.0%)を上回り、今年も回復が期待される。
同じく花見も増加派(7.3%)が減少派(1.0%)を上回り、「歓送迎会」以上の参加が期待できそうだ。
性年代にみると、歓送迎会は、20代男女で増加派が多く(男性:18.4%、女性19.4%)、若年層を中心に活発な歓送迎会の企画・参加がありそうだ。「花見」も増加派は20代女性(12.5%)と30代男性(10.0%)で2桁に達しており、歓送迎会・花見ともに20~30の若手を中心に盛り上がりそうだ。
一方、参加費だが、2025年は歓送迎会の平均想定額が4397円と、2024年より7円減る予想。しかし、花見の平均想定額は2908円と、調査開始以来初の2900円台に達し、過去最高額になりそうだ。
ところで、歓送迎会の相手は「会社・仕事関係」(30.1%)がトップ。コロナ禍の2021年では「会社・仕事関係」は17.0%と最低値だったが、着実に回復している。花見の相手は「友人・知人」(12.8%)が最多で、「家族・親族」(12.6%)、「会社・仕事関係」(8.9%)と続く。事前に入念な計画をたてるだけでなく、直前に日時や場所を決めて参加を募るなど、花見のスタイルも多様化している。
開く機会が減った歓送迎会なので、若者としても積極的に参加したい
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をまとめたホットペッパーグルメ外食総研上席研究員の稲垣昌宏(いながき・まさひろ)さんに話を聞いた。
――そもそもですが、職場で行なう歓送迎会は増えているのでしょうか。
稲垣昌宏さん 弊社の調査は、職場以外の歓送迎会も含む数字なので正確にはわかりませんが、歓送迎会をする職場が増えているのかというと、減っているというのが現実でしょう。コロナ禍前の2019年に比べると、外食における歓送迎会の開催回数は、最新の2024年実績が6割台と推測されます。
これは、普通の飲酒機会数が2019年比で約8割であることから、通常の飲み会よりも回復が遅い状況です。理由としては、働き改革などの社会の変化で、会社の宴会自体が減少傾向であることや、そもそも若年層の人口減少が続いているため、新入社員全体の数が減り、歓迎会の機会自体が少なくなっている影響があると思います。
――なるほど。最近は飲み屋で行なうのでしょうか、それとも職場に料理を持ち寄って行なう方式が多いのでしょうか。
稲垣昌宏さん 2024年の歓送迎会の場所では、おおよそ6割弱が外食、会議室やオンライン開催など2割くらいとなっています。調査の歓送迎会は職場のもの以外も含む数値で、職場の歓送迎会だけでいうとちょっとわかりませんが、間違いなく飲食店で行うほうが多いとは思います。
――歓送迎会は20代男女を中心に参加意向が増加傾向にありますが、Z世代の若者は年上の世代に比べ、職場の飲み会への参加を敬遠する傾向が強いと言われます。真逆の印象を受けますが、その理由はズバリ何でしょうか。
稲垣昌宏さん 20代男女の参加意向はおっしゃるとおり強いわけですが、イコール20代の参加機会数が増えているわけではありません。歓送迎会が行われる総数が減少しているため、参加意向が強くても総参加機会数がプラスに転じているわけではないと考えられます。
ですから、開く機会が減っている歓送迎会なので、若年層としても積極的に参加したいと思う人がけっこういる、という状況なのでしょう。また、機会数が少ないため参加費がさほどかからず、経済的にも参加可能なこともあるかもしれません。
Z世代の「飲酒離れ」は正しくない、飲む頻度は下げている
――開く機会が減っているので、むしろ出たいという若者の気持ちもわかりますが、Z世代は上の世代よりお酒を飲まなくなっているのではないですか。
稲垣昌宏さん 弊社の2018年度と2023年度を比較した調査では、コロナの影響もあって全体的に飲む機会が減っているのですが、下げ幅が大きいのはむしろ30代男性と50~60代女性などです。20代男女の下げ幅はもっとも小さくなっています。ただし、飲む機会の頻度は下がっています。
つまり、若者の飲酒離れというのはそんなに正しくなくて、飲まない人が増えているわけではないが、飲む頻度は下げているというのが私の見解です。その理由は経済的な要因が大きいのかもしれません。
――なるほど。意外ですが、納得できる見方ですね。
稲垣昌宏さん また、そもそも若者の人口が減少しているので、飲む機会数だけでいうと減っているように見えやすいことが、若者の飲酒離れと言われる要因としては大きいのではないかと思っています。
20代の若者については、飲むこと自体を嫌っているわけではないが、経済状況も含めて、意味のある飲み会を吟味して参加しているという動きではないかと推測されます。
ひと昔前の新人の花見の場所取り、パワハラと言われます
――私は70代ですが、昭和や平成の初め頃までは職場で行なう歓送迎会は花見を兼ねて桜が見える場所で開くのが通例でした。新入社員の最初の仕事は花見の場所取り。そして、歌や隠し芸などを披露して先輩と懇親を深めたものです。現在は、職場で歓送迎会と花見と一緒に開くということは少ないのでしょうか。
稲垣昌宏さん 花見と歓送迎会を併せて行うことが多いか少ないかは、データがないので何とも言えませんが、会社の宴会自体が減っている以上、増えているということはないと思います。
新入社員に場所取りをさせるなどは、以前は普通でしたが、今それをやろうとすると、「それは業務なのか? 命令なのか? 勤務時間に含まれるのか?」などとややこしい問題もあり、歌や芸についても強制すると「パワハラ」になる可能性があり、減っていくと思います。
――最近の歓送迎会と花見会の企画で、特に面白い傾向や特長がありますか。こういう企画を行うと盛り上がるよというアドバイスをお願いします。
稲垣昌宏さん 歓送迎会についてはコロナ禍で「オンライン開催」という新たな形態が始まり、2024年度でも一定数の開催はあったようです。コロナ禍終了とともになくなったという話ではなく、新たな開催方法として定着したかもしれません。
花見については、詳細なデータはありませんが、ひと昔前のビニールシートの上に座って、飲酒しながら芸や歌などを交え長時間行うというスタイルから、食べ歩きなどを中心に短時間で楽しむのが増えている気がします。
弊社の2024年の調査では、「屋外にシートを敷いて長時間飲酒をする」という楽しみ方は3割程度。残りは「桜まつりなどのイベントを食べ歩きする」「川沿いなどを散歩して楽しむ」です。これは若年層を中心にタイパ=タイムパフォーマンスを重視する傾向があるため、あまり長時間の宴会を好まないということも影響しているかもしれません。
花見の食べ歩きでも、クオリティの高い飲食費に投資
――今回の調査で特に強調しておきたいことがありますか。
稲垣昌宏さん 歓送迎会・花見とも最近のトピックスとしては、単価の上昇が顕著です。今回の結果でも今年の想定額では歓送迎会は昨年よりは低いですが、過去2番目の高額、花見は過去最高額となっています。
これは物価の上昇の影響が大きいわけではありますが、特に花見では若年層が短時間の食べ歩きなどを好みながら、長時間の宴会よりも高い単価を想定しているということは、短い時間でもよりクオリティの高い飲食(体験価値が高いものには積極的に投資したい)という消費性向があると思います。
物価高で支出内容をより精査する傾向が高まっているなかで、体験価値の高い飲食が選ばれ、勝ち残るという傾向が見て取れると思っています。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)