「アンテナショップ」宮城県が閉店のち復活 クラウドファンディングで集めた再開資金が巨額

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   通路が広くゆったり感のある商品展示、カウンターテーブルでは、地元三重県のスイーツとコーヒーなどが楽しめる。カウンターに「FREE 2Fで コワーキングスペース 利用できます!」と掲示が出ていた。その2階に上がると、ゆったりとしたコミュニティスペース。この日はイベント準備で一部しか使えなかったが、ラインで登録すると、三重にゆかりのない人でも無料で利用できる。2023年9月に東京・日本橋室町のビルでリニューアルした三重県のアンテナショップ「三重テラス」だ。

   ネット通販で気安く地方のモノを買える時代、各自治体がアンテナショップに知恵を絞っている。

  • 奈良まほろば館
    奈良まほろば館
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「北海道どさんこプラザ」年売り上げ10億円越え

   2021年に東京・新橋でリニューアルオープンした奈良県の「奈良まほろば館」はデザイン性あふれた造りだ。物産を並べたほか、1階にカフェ&バー、2階には高級レストラン「TOKi」がある。奈良の食材を使ってモダンスパニッシュ料理を出している。「ミシュランガイド東京2025」で一つ星として掲載された。

   2024年3月にできた石川県の「八重洲いしかわテラス」は木材をふんだんに利用した店構え。能登半島地震の後、話題を呼んだ。

   地域活性化センター(東京)が2024年11月に発表したアンテナショップ実態調査結果では、都内には66店舗のアンテナショップがあり、売り上げは回復基調という。店舗数はコロナ禍で市などが店を閉じて2020年の81店から減っているが、都道府県の店には大きな変化はない。

   畠田千鶴・メディアマーケティングマネージャーは「新装した店を中心にスタイリッシュになっています。また、商品のブランド化を推し進めています」と話す。過去最高の売上高を記録する店が増えているという。最も売り上げが多いのは、有楽町の「北海道どさんこプラザ」で、2023年度は4年ぶりに10億円を超えた。

アンテナショップは故郷の実家のようなもの

   ただ、ここにきて課題も浮上している。

   東銀座にあった群馬県の「ぐんまちゃん家」は採算性などを考慮し、2022年暮れに閉店した。

   宮城県では、2023年1月から、マーケティングの専門家や大学教授、食品製造事業者らを集めて「首都圏アンテナショップ在り方検討懇話会」を設置し、アンテナショップの必要性を議論した。

   2024年9月まで8回の会合を開き、県としてアンテナショップを設置することよりも、県産品について首都圏以外の人たちもターゲットする方針を打ち出し、ネットも活用して事業者の販路拡大を支援していくことにした。県の事業として20年間続けてきた、池袋の「宮城ふるさとプラザ」は2024年12月15日で閉店した。ただ、アンテナショップは捨てがたく、県ではなく、宮城県物産振興協会が独自に開くことになり、2025年1月28日に場所は茅場町に移して同じ店名で再開した。26年3月までの仮店舗で、その後も場所を移して続ける予定だという。

   関係者を驚かせたのが、「宮城ふるさとプラザ」を再開させるために協会が実施したクラウドファンディングだ。目標の2000万円を越す2823万円が集まった。アンテナショップは首都圏の人にとって「実家のようなもの」という根強い人気がある。

(経済ジャーナリスト 加藤裕則)

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