自分の経験やスキルが活かせる場所、自分の希望がかなえられる場所を探そう
――50歳以上のITエンジニアは、転職するにあたって何が一番大切か、心がまえやスキルの学び直しなど、アドバイスとエールをお願いします。
丹野俊彦さん 50歳以上であれば多くの経験を積んでいると思いますので、まずはご自身のキャリアの棚卸しを行っていただくのがよいと思います。その際は転職エージェントなど第三者の力を借りながら、客観的に振り返ってみましょう。
そのうえで、今、世の中でどんな技術が求められているのかを知り、関連する資格を取ることをおすすめします。資格があることによって社外にご自身の知識やスキルを示せるだけでなく、新しい技術を学ぶ姿勢があることのアピールにもつながります。
――今回の調査で特に強調しておきたいことがありますか。
丹野俊彦さん 企業と個人、それぞれにやるべきことがあると思います。まず、企業は人口が減少し人手不足が進む状況のなか、採用の難易度が上がっています。適切な報酬を設定するなど魅力的な人事制度を用意し、社員からも求職者からも選ばれる企業になることが必要でしょう。
また、中途採用にあたってはほかの企業が採用候補の中心に据えていない層にも候補を拡大することで、ポジションに適した人材を採用できることがあります。たとえば、転職事例であげたBさんのように、シニア層の未経験者を育成前提で採用するなどです。
個人としては、今の50代以上の方は、終身雇用が前提で今の会社で定年まで勤め上げようと思っていたのに、時代が変わってリスキリングやキャリア自律という言葉が出てきて、今後のキャリアをどうすればいいのか戸惑っている方が多いのではないでしょうか。
そのような方々に伝えたいのは、ご自身のキャリアを客観的に見つめ、やりたいこと、できること、世の中から求められていることの重なりを見つけること。そうすると、主体的にキャリアを描くことができるでしょう。
たとえば、Aさんは、組織拡大にともなうさまざまな経験を、それを求めている小規模な企業で活かすという、ご自身の「できること」を世の中のニーズとマッチさせた好事例です。
会社規模や年収、役職など現職の条件を維持することを必須条件にせず、ご自身の経験やスキルが活かせる場所はどこか、そこで自分の希望がかなえられるか。そういった視点での仕事探しが、転職成功のカギになると思います。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
【プロフィール】
丹野 俊彦(たんの・としひこ)
株式会社リクルート
ハイキャリア・グローバルコンサルティング1部3グループ
米国CCE.Inc.認定GCDFキャリアカウンセラー
大学新卒で国内証券会社の営業および人事採用担当を経験後、2007年に株式会社リクルートエージェント(現リクルート)に入社。
ITを中心に、幅広い業界の採用支援および転職支援を担当。面接力向上セミナー講師経験などを経て、現在は大手シンクタンク、SIer、大手ITコンサルティング企業のIT、DX領域の採用支援およびITエンジニア、ITコンサルタントのキャリア支援に従事。