フィルムカメラ、Z世代の間でブームも... フィルムは1本1500円!物価高が容赦なく襲うせちがらい現実

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   若者の間で「フィルムカメラ」が流行っている。

   デジタルカメラやスマホカメラでは表現できない画質、雰囲気が若い世代に受け入れられたのだ。

   思えば2000年代までは、近所の写真店だけでなくコンビニエンスストアなどでも難なく購入することができた写真用フィルム。しかし、そこには昨今の国際情勢と物価高が大きな影を落としている。

   久々に若者が足を通うようになった街の写真店では、物価高に対する嘆きが絶えない。

  • フィルムカメラ、Z世代の間でブームに(写真はイメージ)
    フィルムカメラ、Z世代の間でブームに(写真はイメージ)
  • リコーイメージングのフィルムカメラ『PENTAX 17』
    リコーイメージングのフィルムカメラ『PENTAX 17』
  • フィルムカメラ、Z世代の間でブームに(写真はイメージ)
  • リコーイメージングのフィルムカメラ『PENTAX 17』

なぜ若者がフィルムカメラに注目するのか

   スマホカメラを含むデジカメは、設定次第ではあるが最終的な写りがシャープになるようにできている。

   その場の景色を正確に写実するということでは、デジカメはそのパフォーマンスを十二分に発揮する。しかし、写実的な画像はあまり面白くない。だからこそ、若者はスマホで撮影した写真をわざわざ加工アプリで作り直す。色合いを変えて、写実的な画像からあるテーマに沿った描写的な画像に加工するのだ。

   フィルムカメラを使えば、当初からノスタルジーに溢れた「エモい写真」を撮影することができる。また、フィルムカメラは、デジカメのように何十枚も連続で撮影することができない。しかし、それゆえに「自分の腕」が試されること、どのような写真が出てくるのか現像に出すまで分からないことも若者に支持される要因になっている。

   2024年7月には、リコーイメージングがフィルムカメラ『PENTAX 17』を発売。35mmフィルムの半分を1枚として換算する、ハーフサイズカメラの新製品がデジタル全盛の2024年に登場したことは、大きな話題になった。

フィルムはいまや「高級品」に

   だが、カメラを買っても、フィルムがなければ撮影できない。

   そのフィルムだが、近年価格改定が相次ぎ、もはや1000円以内では買えないようになっている。

   富士フイルムの36枚撮りカラーネガフィルム『フジカラー FUJICOLOR 100 36枚撮り』の公式オンラインショップでの価格は1540円。もちろん、これは1本の価格である。

   より感度の高い(つまり暗所での撮影に対応できる)『FUJIFILM 400 36枚撮り』の価格は、なんと1980円。アルバイトで生活費を稼ぐような大学生にとっては、かなりの重荷になるはずだ。

   写真撮影を趣味とする筆者も、写真店で聞くのはいつも物価に対する愚痴である。

   写真店に行くと、富士フイルムやコダックのフィルムはいずれも「高級品」になってしまい、代わりに店頭の目立つところに並べられるようになったのは、ケントメアというイギリスのメーカーのフィルムである。

   このケントメアの35mmフィルムなら、販売価格はちょうど1000円程度。ブローニー120フィルムであれば、それより200円ほど安い。ただし、ケントメアのフィルムはいずれも白黒。

   今日び、白黒フィルムの現像に対応している写真店は多くない。そのため、これを現像するには写真店を経由した外注というかたちになってしまう。つまり、現像に時間がかかるのだ。

「自分で現像もする人はその限りではないのですが、そうなると写真材料の値上げの影響をなおさら被ってしまいます。このまま価格が高騰すると、若者はよほどの金持ちでない限りフィルムカメラなど撮影できなくなるのではないでしょうか」

   これは、とある写真店の店主の言葉である。

物価高に怯える写真愛好家たち

   実は、写真材料の段階的な価格引き上げは、パンデミック以前からすでに始まっていた。しかし、それが一段と顕著になったきっかけはやはり、ロシアのウクライナ侵攻だろう。

   9.11に並ぶ21世紀最大級の情勢不安は、あらゆるものの価格を一気に押し上げた。

   数多くの材料や薬品を使わなければならないフィルムカメラの世界は、そこからくる高波の影響を真正面から被ってしまったかたちである。

   上述のケントメアのフィルムも、そう遠くないうちに1500円、2000円に価格が引き上げられてしまうのではないか――。そんな心配もある。

   Z世代をにぎわせているフィルムカメラブームだが、物価高の恐怖と隣り合わせでもある。(澤田真一)

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