行き過ぎたルッキズムが若者の心を狂わせる 美醜に苦しめられ、比較にとらわれ...個性さえ失くす末路

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   一昔前なら、美容整形は日本国内でタブーのような扱いを受けていたように思う。手術を受ける人々は一定数いたけれど、基本的には「隠すもの」といった概念が強く、否定的な意見が多かった。

   現在では美容クリニックがあちこちに乱立し、整形を公表するタレント、インフルエンサーがユーザーより高い支持を集めるほどだ。広告も電車や街中など一般市民の目に触れる場所に増えたのだから、整形経験者である私も時代の移り変わりを実感する。

  • 行き過ぎたルッキズムに警鐘(写真はイメージ)
    行き過ぎたルッキズムに警鐘(写真はイメージ)
  • 筆者のたかなし亜妖さん
    筆者のたかなし亜妖さん
  • 行き過ぎたルッキズムに警鐘(写真はイメージ)
  • 筆者のたかなし亜妖さん

「美しければ美しいほど正義」

   美容ブームが到来してから、日本人のルッキズムには変化が起きた。

   顔にメスを入れ、注射を打つこと自体が悪とされていたのに、今では「美しければ美しいほど正義」なんて考えが浸透しつつある。年代問わず見た目にこだわる人が急増し、特に若者は美意識が凄まじく高い。

   最近はパーツが整っていることや、抜群のスタイルだけではなく、骨格や肌の色、そして美容体重と称した細部にまで注目が集まり始めた。

   考え方が少々過激化したのか、隅から隅まで美しさを追求した結果、キリがなくなった部分がある。気を遣い過ぎて拒食症などの健康被害を及ぼすケースも多く、ルッキズムが時に人を狂わせる一つの要因となってしまった。

   顔が良ければ中身は二の次、ルックスが何よりの武器だと信じてやまない現代人が増えると、考え方が偏っていく。人は見た目が9割なんて言われるが、そこだけに意識を集中させるといつか大事なものを失うだろう。

レベルが高い人を見ては気分が塞ぐ

   「顔さえ良ければ」の精神がすっかり染みつき、毎日誰かと比べるようになれば、美しさを自分の中で義務化する。

   これが、整形依存や見た目に執着し始める合図。常に鏡を見て、ああでもない、こうでもないとなり、徐々に何をしても満たされなくなる。第三者から見ればすでに完璧に見えても、当の本人が納得をしなければ、ずっと美醜に苦しめられるのだ。

   たとえ美容整形手術に踏み切らなくとも、見た目への執着が激しければ、自分の顔を見るたびに落ち込むなどして、精神的にダメージを受けるパターンも多い。

   この手のケースは、最も解決が難しい。レベルが高い人を見ては気分が塞ぎ、己の心を傷つける原因となる。整形や大きな変化をもたらすメイクに辿り着けないからこその歯がゆさが自虐へとつながり、すぐに誰かと比較する悪いクセがつく。

   そうした考え方の筋道を経て、思想が歪みきると「あの子は可愛いから特別だ」「私はブスだから特別扱いをしてもらえない」なんて驚きの発想に至り、次第にドツボへはまる。

自分の姿を見て...鏡を割ってしまった

   私の周りにはルッキズムを拗らせた知人がいて、彼女は俗に言う「醜形恐怖症」だった。

   悩みが大きくなり、自分の姿を見て「発狂」した勢いで鏡を割ってしまった。「常に誰かと比較されている気がして、(自分の)顔を見ては心が荒む。美人が羨ましくてたまらない」なんて当時はぼやいていたのを、今でも覚えている。

   まるで嘘のように思えるけど実際に起きたエピソードであり、美への過剰なこだわりと曲がった思想がもたらした悲劇とも言えようか。

   また、美しさにこだわるあまり、個性を失くす点も問題視すべきだろう。

   誰しもが「憧れの人」と目標を掲げ、ファッションやヘアメイクを真似するのは昔からよくあることだけれど、完全なるコピー人間では自我を見失う。最近は手術をするパーツでさえ誰かの真似をするほどで、ベースを活かすという頭がまるでない。何事も右へならえが続くと最悪の場合、内なる部分にまで悪影響を及ぼす危険性が考えられる。

自分という最大の宝物を大切に

   意識の変化が偏見を薄れさせ、多くの人に希望を与えるのだから、美へのこだわりは決して悪いことではない。しかし、見た目ばかりにこだわると、薄っぺらい人間が出来上がり、ズレた思想が生まれる。一つの物事に執着すると、周りが見えなくなってしまうのだ。

   整形している私が言うのもおかしな話かもしれないが、もともと整形はシークレットな行為で、簡単に憧れを抱くものではない。自分という最大の宝物を大切にし、ブームに流されるだけの人間にはならないよう気を付けるべきだろう。



【プロフィール】
たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。

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