スマホの乗り換えが簡単になった現在、乗り換え先の人気が高いのはどこか、反対に乗り換えられやすいサービスは?
モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都中央区)が2025年3月15日に発表した「2025年2月MVNOのシェア・満足度調査」によると、楽天モバイルが圧倒的人気で、一人勝ち状態。また、不人気トップはSoftBankだという。
いったいなぜか。調査担当者に聞いた。
乗り換え先人気上位は楽天モバイル、Y!mobile、UQ mobile
従来、スマホの番号をそのまま持ち運んで通信サービスを乗り換える「MNP」(携帯番号ポータビリティー)では、乗り換え元と乗り換え先の2社での手続きが必要だった。しかし、2023年5月から乗り換え先1社だけで手続きが済む「ワンストップ方式」が始まり、手続きが簡素化された。
MMD研究所の調査(2025年2月1日~6日)は、18歳~69歳の男女4万人が対象。そのうち通信契約しているスマホ所有者3万6836人に、現在利用している通信サービスからの乗り換えを検討しているか聞くと、「乗り換え検討」が27.1%、「解約を検討」が3.7%、「検討していない」が69.3%となった。
これを通信サービス別に見ると、最も乗り換え意向が高いのはSoftBank(32.7%)、最も乗り換え意向が低いのは楽天モバイル(22.0%)となった【図表1】。
具体的な乗り換え先を検討している6190人に、乗り換え先として最も検討しているサービスを聞くと、楽天モバイル(23.8%)がダントツに高く、次いでY!mobile(13.7%)、UQ mobile(12.1%)の順【図表2】。なお、「他社乗り換え」には系列のdocomoからahamo、auからpovo、SoftBankからLINEMOの乗り換えを含む。
2024年2月の同様の調査と比較すると、「楽天モバイル」がプラス1.3ポイントと最も増加しており、次いで「SoftBank」の1.2ポイント、「LINEMO」の0.7ポイント増が目につく【図表2】。
これを年代別に上位3位までを見ると、それぞれの年代で人気のサービスがわかり興味深い。10代だけは「MVNO」(格安スマホ)がトップになったが、20代から60代まですべて「楽天モバイル」がトップとなった。また、2位に「Y!mobile」が多いのが目を引く【図表3】。
乗り換えを検討している9974人に、その理由を聞いたのが【図表4】だ。「料金が高い」(27.6%)が圧倒的に多く、次いで「他社のサービス、特典を魅力的に感じる」(13.2%)、「自分が貯めているポイントとサービスを連動させた い」(10.3%)が続き、「料金の安さ」を求める人が多い。
格安スマホが10~20代にだけ人気の理由
J‐CASTニュースBiz編集部は、MMD研究所の調査担当者に話を聞いた。
――今回の調査、最も乗り換え意向が低いのが楽天モバイル、また、乗り換え先のトップも楽天モバイルです。楽天モバイルの一人勝ち状態ですが、こと乗り換え先の人気度がこれほど高い理由は何でしょうか。
また、Y!mobileも乗り換え検討先の2位に浮上していますが、その理由は何でしょうか。
担当者 アンケートデータから見る楽天モバイルの人気の理由は、容量無制限で税込み3278円というコスパの良さと、楽天経済圏を活かした楽天ポイントの還元の魅力になります。特に楽天市場や楽天カードなど、楽天サービスを利用している方に楽天モバイルの魅力をうまく訴求していると思います。
2位のY!mobileはソフトバンクのサブブランドで、通信料金を抑えることができ、端末セット販売や店舗数の多さ、安定した通信品質など、大手キャリアならではの安心感があります。特にお子さんの初めての携帯契約や年配層の方に人気です。テレビ通販などご年配の方に向けた販売方法も特長です。
――格安スマホ(MVNO)が10代ではトップですね。しかし、20代(2位)以外では、各年代で3位以内にも入りません。10~20代でだけ人気がある理由は何でしょうか。
担当者 MVNOは全体のシェアは1割ほどなので、大手キャリアの中で乗り換え先の上位に入るのはかなり難しいです。その中でも10代で乗り換え検討が1位となっているのは、格安SIMと呼ばれるMVNOが若い世代に認知と理解が浸透していること、そして何としても通信料金を安くしたいニーズが高いことだと思います。
MVNOはネット契約が主流であり、ネットの宣伝が中心のため、ネット世代の認知が浸透してきていると思います。
総合満足度が高いpovoが、なぜ乗り換え先では上位にこない?
――これに対して最も乗り換え意向が高いのはSoftBankです。SoftBankのどこに不満で、乗り換えたいと思うのでしょうか。一方、SoftBankは10代の乗り換え先検討では2位になっています。このギャップの理由は何でしょうか。
担当者 SoftBankは当社の最新の「MVO(大手4キャリア)のシェアと総合満足度調査」では満足度が下位になっており、離脱要因の傾向が表れています。ただ、SoftBankユーザーの乗り換え移行先ではサブブランドのY!mobileが人気なので、同じキャリア内でブランド移行が起こっています。
10代の乗り換え先でSoftBankが高い理由は、ソフトバンクのデビュー割で22歳以下の人が実質0円になり、通信費を抑えられて新しい端末もお得に購入できることが挙げられます。
――なるほど。ところでその「MVOのシェアと総合満足度調査」では、総合満足度1位がpovoでした。しかし、povoは乗り換え先としての人気度が低く、前回調査と比較しても0.5ポイント下げたばかりか、どの世代のランク3位に入っていません。このギャップの理由は何でしょうか。
担当者 満足度調査は利用者の方の声となるため、乗り換え先の人気を示すバロメーターとしてよりも、継続的に利用したい意向に対する指標としてみることのほうがいいです。評判が高まればクチコミで人気が高まる可能性があります。
povoはデータトッピングという通信ブランドの中で新しいサービスを提供しています。基本料金0円のため、サブ回線として人気があります。今回の調査はメイン回線の乗り換え検討先の調査になります。
新規ユーザー獲得競争から、長期利用者の定着サービス競争に
――最後の乗り換え理由をみると、ユーザーたちは何をもって乗り換えたいと考えているのでしょうか。結局、「安ければいい」という結果に思えますが、いかがでしょうか。また、携帯大手各社は乗り換え先問題に関してはどのような競争をしているのでしょうか。
担当者 通信サービスは電気やガスと同じで、生活に欠かせないインフラです。そのため、不満がなければ乗り換えはあまり意識しません。乗り換えを意識する不満の2大要素は「通信がつながらない」「料金が高い」になります。
企業はお客の不満を取り除く努力とともに乗り換え先として選択してもらうためにさまざまな独自施策を取り組んでいます。今回の調査で人気の楽天モバイルやY!mobileは、特徴ある魅力で差別化を図り人気となっています。
調査では乗り換えを検討している10~30代は3割を超えています。番号をそのまま移行できるMNP(携帯電話番号ポータビリティ)や、オンラインで手軽に契約できる環境が整備され、若い人々にとっては乗り換えが難しくないという感覚が浸透しています。
新規ユーザーの獲得競争に力を注いでいた各社も、長期利用者にさらに使い続けていただく取り組みを強化しています。そのため、通信サービスだけの特典ではなく、金融サービスなど経済圏の競争が始まっています。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)